整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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けが(外傷)

TFCC損傷

TFCC損傷とは

TFCC(Triangular fibrocartilage complex:三角線維軟骨複合体)損傷は、手首の尺骨側(小指側)の痛みの原因となる疾患です。診断が難しく、しばしば単なる捻挫として放置されていることがあります。交通事故、手をついて転倒するなどの外傷や、スポーツ外傷でもよく見られます。一度の強い衝撃で発生する急性の損傷と、繰り返し行われる動作によって起こる慢性の損傷の2種類があります。診断には、MRIが有効です。治療方法は、まず3か月間の装具による保存的治療を行い、改善しない場合は手術を検討します。リハビリテーションが重要で、3か月で日常生活への復帰、6か月でスポーツ活動への完全な復帰を目指します。

TFCC損傷の原因

TFCC損傷は、転倒して手をついた際に生じやすく、手関節が過度に背屈した状態や回内位になっているとされています。スポーツでは、野球やテニス、ゴルフのようにグリップを握る動作や、柔道で相手の襟や袖を掴む動作、体操でバーを把持する動作など、手関節尺側に軸圧がかかる場合や、過度の背屈、尺屈、回旋ストレスが加わる状況で損傷が生じやすいと考えられています。格闘技の分野では、柔道、レスリング、空手、合気道、ボクシング、マーシャルアーツなどでTFCC損傷が見られることがあります。

TFCCの構造と機能

三角線維軟骨複合体(TFCC)は、手関節の尺側に位置する靱帯や線維軟骨の複合体のことで、遠位橈尺関節(DRUJ)の支持性や尺骨手根関節(UCJ)での力の伝達とクッションの役割を担います。TFCCには、掌側橈尺靭帯や背側橈尺靭帯、尺骨月状骨靭帯、尺骨三角骨靭帯、関節円盤(disc proper)、メニスカスホモログ、尺側手根伸筋(ECU)腱鞘、尺側側副靭帯などが含まれ、ハンモック状の構造を形成しています。特に橈尺靱帯は、遠位橈尺関節の主な支持構造として認識されています。

TFCC損傷の症状

DRUJ(遠位橈尺関節)の不安定性や、それに伴う滑膜炎によって手関節の尺側部の痛みや回内外の可動域制限が生じます。スポーツでは、手を床につけた際に強い手首の疼痛が出たり、野球のバッティングやゴルフのスイングのフォロースルー、テニスでの強力なトップスピンストロークやスマッシュなどで手関節の尺側部の痛みが生じやすいです。テニスでは、ストロークを打つ際などに疼痛がでます。剣道での打ち込み、卓球やバドミントンでのフォアやバックハンドストロークを打つ際の運動痛や誘発痛を訴えることもあります。DRUJの不安定性を感じる自覚症状としては、クリック感や擦れる音、手関節が緩い、または抜けるような感覚が出ることもあります。

TFCC損傷と鑑別すべき疾患

手関節の尺側部痛を引き起こす疾患は多く存在します。骨関節の病気としては、尺骨茎状突起の骨折や有鉤骨の骨折、遠位橈尺関節症、尺骨突き上げ症候群、月状三角骨間関節症、豆状三角骨間関節症、(偽)痛風などが挙げられます。また、腱や靱帯の損傷には、ECU腱鞘炎、月状三角骨間関節靱帯損傷、尺側手根屈筋(FCU)腱炎などがあります。基本的には、痛みや圧痛の部位を正確に把握することでこれらの疾患を鑑別することが可能ですが、診断に苦慮することもあります。

TFCC損傷の検査

TFCC損傷に対する徒手検査法には、感度や特異度が高いものもありますが、単一の検査だけに頼ることは避け、複数の徒手検査を組み合わせて行い、触診や画像検査の結果と合わせて診断することが推奨されます。また、健側との比較も重要です。代表的な徒手検査法を紹介します。Piano key sign、Fovea sign、Ulnocarpal stress test、DRUJ ballottement testなどがあります。

画像診断においては、単純X線ではTFCC損傷自体の診断は困難ですが、DRUJやUCJの変形性関節症や尺骨突き上げ症候群の評価は可能です。MRI検査が有効で、特に橈尺靭帯の剥離や断裂の有無の評価が手術の必要性を判断するために重要です。CT検査は、DRUJの不安定性を評価するために用いられ、異常可動性や関節適合性の評価を行います。

治療方針の決定にはPalmer分類が有用で、外傷性損傷:1A~1D、変性損傷:2A~2Eとされています。治療の中心となるのは、近位部損傷(Palmer分類IB)であり、尺骨小窩(fovea)からの橈尺靭帯の損傷に関しては、関節鏡視所見に基づいた詳細な分類が提案されています。

TFCC損傷の治療

1. 保存的治療

少なくとも3か月間の保存的治療を行います。Cock-up splintという装具療法を、手洗いや入浴時を除き、ほぼ24時間装着します。手関節の拘縮予防のため、手関節の掌背屈運動を許可しますが、回旋運動は禁止とします。疼痛の改善のために、ステロイド注射(トリアムシノロン5mgと1%キシロカイン1ml)を行うこともあります。

3か月の安静期間後には、過度な回旋運動の負荷を制限し、疼痛の再発がないかをチェックします。1か月後に疼痛が再発しなければ、スポーツ競技への完全復帰を許可します。疼痛が再発した場合は、手術を検討します。

2. 手術的治療

3か月の保存治療後にも症状が改善しない場合や、痛みやDRUJの不安定性がある場合には、手術的治療が適応となります。特に多いのは、foveaに付着する橈尺靭帯の近位部の断裂です。Foveaから剥離された橈尺靭帯を修復するための関節鏡視下手術が報告されており、良好な成績が得られています。関節円盤の損傷の場合、断裂が原因で痛みが生じている場合には、関節鏡視下での部分切除により痛みを軽減させることができます。また、尺骨短縮術などを行うこともあります。

3. 手術後のリハビリテーション

関節円盤の部分切除術後には、術後4週間の外固定を行い、その間に手指の運動を中心に行います。その後、手関節の可動域訓練を行い、術後8週以降からは手関節に負荷をかける運動を開始します。橈尺靭帯の修復術後は、6週間の外固定後に回旋運動を開始し、術後3か月を目標に可動域の改善を目指します。スポーツ競技を行う場合は、疼痛や不安定感が生じないかを注意深く観察する必要があります。

参考文献)

・MB Orthop. 36(5): 59-66, 2023, TFCC損傷, 斉藤 忍.

・上肢のスポーツ外傷・障害 Up to date, 三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷, 中村 俊康

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