整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗しょう症外来・ペインクリニック

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DISEASE DETAILS 疾患一覧

股関節の痛み

単純性股関節炎

お子さんが突然「足が痛い(足の付け根が痛い)」「歩けない」と訴える場合、単純性股関節炎の可能性があります。主に3~10歳の子どもにみられ、股関節の中に一時的な炎症(水がたまる状態)が起こることで痛みや歩行障害が生じます。多くは安静で1〜2週間ほどで自然に改善しますが、まれに他の病気が隠れていることもあります。急に股関節や脚の痛みが出た場合は、早めに整形外科を受診してください。

単純性股関節炎とは

比較的突然に股関節痛を生じ、下肢痛や歩行障害を主訴に受診することが多い疾患です。小児の股関節痛で最も頻度が高い一過性滑膜炎(単純性股関節炎)で、発症年齢は主に3~10歳(報告により2~12歳まで含まれ、平均は約5歳)とされ、男児に多く女児の2~3倍発生します。治療の基本は安静で、多くは1~2週間の経過観察で軽快し、遷延しても6週間以内に改善します。手術は不要です。

単純性股関節炎の原因

原因は外傷・アレルギー・感染など多岐にわたる可能性が指摘されていますが、明確な機序は未解明です。単純性股関節炎には確立した診断基準がなく、他疾患を除外して診断する“除外診断”と位置づけられます。病態としては、股関節滑膜に一過性の炎症が生じ、関節液が過剰に産生され関節腔内に貯留します。とくにウイルス感染や溶連菌感染の先行との関連が示唆されており、外傷説・アレルギー説も挙げられますが、いずれも決定的な因果関係は証明されていません。

単純性股関節炎の症状

比較的突然に下肢痛や股関節痛を訴えて受診することが多く、おむつ交換や着替えの際に泣くなどの動作時痛で気付かれることもあります。急激な股関節痛で歩行困難となる場合があります。しばしば呼吸器感染が先行し、微熱を伴うことがありますが、高熱はまれで、患部の腫れ・発赤・熱感は通常みられません。好発年齢は3~10歳で男児に多く、通常は片側性です(両側同時発症や多関節発症は基本的にみられない)。主症状は股関節痛ですが、大腿部痛や膝痛として訴えることもあり、その場合は本人が股関節痛を自覚しないことがあります。

単純性股関節炎との鑑別が必要な疾患

単純性股関節炎の診断にあたっては、化膿性関節炎との鑑別が最も重要です。特に発熱が伴う場合は、化膿性関節炎を疑い、迅速に対応する必要があります。また、膝の痛みを訴えて受診する例もあり、その場合には膝関節に異常がないかも確認します。股関節水腫が2週間以上引かない場合には、初期のPerthes病も鑑別に考慮する必要があります。さらに、長引く股関節痛で股関節炎が疑われた場合に、白血病が隠れていることもあると報告されています。

単純性股関節炎の検査

単純性股関節炎では、理学所見として関節可動域が軽度~中等度に制限され、なかでも屈曲位での内旋制限が目立ちます。単純X線は骨折や骨病変など他疾患の鑑別を目的に施行し、関節包陰影の膨隆、関節裂隙の開大、骨頭の外方化を認めることがありますが、骨陰影そのものに明らかな異常は認めません。超音波検査は関節液貯留の確認に有用であり、大腿骨頭・大腿骨頸部、関節軟骨、成長軟骨を描出して関節液(水腫)の有無を評価します。MRI(提携医療機関で撮影)では関節水腫と周囲軟部組織の高信号が確認され、関節液貯留の所見がより明瞭になります。

血液検査(血算、生化学、血液像、赤沈、CRPなど)は、化膿性股関節炎との鑑別が困難な場合に検討します。Caird(2006)は化膿性股関節炎の予測因子として、発熱(≥38.5℃)、強い疼痛により起立不能(non–weight bearing)、白血球数(≥12,000/mm³)、赤沈ESR(≥40 mm/時)、CRP(≥2.0 mg/dL)の5項目を挙げ、これらのうち3項目以上を満たす場合には化膿性股関節炎の可能性が高く、診断率が80%を超えると報告しています。

単純性股関節炎の治療

原則は安静で、多くは数日~1~2週間で軽快します。症状が強い場合は消炎鎮痛薬や松葉杖による免荷を併用します。さらに疼痛が高度であれば入院のうえベッド上安静や牽引を行います。再発を数回繰り返すことがありますが、確立した予防法はありません。それでも予後は良好で、遷延しても2~4週間で著明に改善し、多くは6週間以内に軽快します。

参考文献)

・小児科臨床 Vol.71 増刊号 2008

・須藤啓広.「股関節の疾患」.標準整形外科 第13版.井樋栄二ほか編.医学書院,2017:610.

・土屋 真穂.単純性股関節炎.整形外科看護.2024;29(4):343-346.

先生から一言

単純性股関節炎は2~12歳の子どもに突然発症する股関節痛が主症状です。治療は安静のみで数日~2週間程度でよくなる疾患です。感染による股関節痛である化膿性股関節炎を除外することがとても重要で、見逃すと重大な後遺症を残す可能性があります。

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