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肩の痛み
痛風・高尿酸血症
突然の関節の激痛や腫れは、痛風発作のサインかもしれません。当院では痛みコントロールを最優先に、内服治療に加えて必要に応じて関節内注射も行い、つらい疼痛の早期軽減をめざします。同日に血液検査と画像検査で評価し、炎症が落ち着いた後は尿酸値管理と生活指導で再発予防まで一貫してサポートします。高尿酸血症に関連する心筋梗塞や脳卒中リスクに配慮し、脂質異常症・高血圧などの併存症治療します。三国ゆう整形外科は大阪市淀川区(三国・十三)エリアから通院しやすい立地(三国駅から徒歩1分、駐車場41台有)です。
疾患の概要:痛風・高尿酸血症とは
痛風(gout)は、血液中の尿酸が多い状態(高尿酸血症)が続き、関節の中に「尿酸の結晶」がたまって炎症を起こす病気です。もっとも多いのは足の親指の付け根(母趾MTP関節)ですが、足首・膝・手首・肘・指など、どの関節にも起こり得ます。発作は突然はじまり、約12時間で痛みのピークに達するといわれます。痛風発作をくり返すと皮膚にしこり(痛風結節)ができたり、関節が変形することがあります。
高尿酸血症は血清尿酸7.0mg/dL以上の状態で、持続すると腎臓(痛風腎)や皮膚(痛風結節)に結晶が沈着します。近年増加傾向にあり、成人男性の約20〜25%が該当するとされます。メタボリックシンドロームや高血圧、心不全などの心血管疾患、さらには死亡リスクとの関連が複数の研究で示唆されています。
尿酸はプリン体代謝の最終産物で、食事由来に加えて体内でも産生されます。アルコール、果糖を多く含む清涼飲料、プリン体の多い食品の過量摂取、極端な高たんぱく、脱水は尿酸を上げやすい要因です。痛風・高尿酸血症は生活習慣病と位置づけられ、飲料・食事・運動・体重管理を治療の土台として、再発予防と心腎血管リスクの低減を目指して取り組みます。
痛風の症状
痛風発作は突然始まり、12時間以内に痛みのピークを迎えます。関節は赤く腫れて熱を持ち、触れるだけでも激痛で、歩行困難になることもあります。無治療でも2〜3週間で軽快する場合がありますが、繰り返すと間隔が短くなり、慢性痛風や結節形成、関節破壊につながります。発熱・悪寒などの全身症状を伴うこともあります。

原因と病態
尿酸は核酸に由来するプリン体代謝の最終産物で、食事からの摂取だけでなく体の中で新しく作られる分(グルタミン・グリシン・アスパラギン酸などからの合成)によっても産生されます。尿酸値を上げやすい要因としては、アルコールや果糖を多く含む清涼飲料(ジュース、エナジードリンク、果汁飲料など)の摂取、プリン体が多い食品のとり過ぎ(たとえばレバー、干物、カツオ、イワシ、アンチョビ、ムール貝、ホタテ、マス、マグロなど)、さらに極端な高たんぱく食や脱水が挙げられます。
高尿酸血症には「産生過剰」と「排泄低下」の両方の機序が関与します。尿酸の生体内溶解度はおよそ6.7mg/dLで、この値を超えると関節などで結晶が析出しやすくなります。血清尿酸値が9mg/dL以上の方では、その後5年間に痛風発作が生じる可能性が20〜60%とされています。また痛風には遺伝的素因もあり、家族内に患者さんがいる場合は発症リスクが高まります。
検査・診断
検査は、まず血液検査で尿酸値や腎機能(クレアチニン・eGFR)を確認します。発作の最中は一時的に尿酸値が正常に近づくことがあるため、結果の解釈には注意が必要です。あわせて、同じ生活習慣病に分類される高脂血症・高コレステロール血症や糖尿病についても同時に評価できます。なお、高尿酸血症は一般に男女とも血清尿酸値7.0mg/dL超で定義されますが、女性はホルモンの影響で尿酸が低めの傾向があるため、臨床現場では6.0mg/dL超でも注意して評価します。高尿酸血症が見つかった場合は、痛風発作や腎障害などの臓器障害の有無を確認し、生活指導と薬物療法へつなげます。逆に尿酸が低すぎるときは、腎性低尿酸血症などの原因検索が必要です。
X線は慢性期の骨びらんや関節破壊を把握するのに有用です。関節の評価には関節超音波(エコー)を用い、腫れの程度や尿酸塩結晶に特徴的な「double contour sign」などを確認することもあります。診断を確定させる必要がある場合には、関節液を穿刺して結晶を直接確認します。
痛風発作の治療
急性期はまず痛みと炎症のコントロールを最優先とし、基本はNSAIDs(ロキソプロフェン、ジクロフェナクなど)で対応します。
NSAIDsが使いにくい、または効果不十分な場合は、副腎皮質ステロイドを短期間のみ使用します。目安としてプレドニゾロン20〜30mg/日で開始し、炎症が落ち着けば数日で終了します。内服が難しいときは、ステロイドの関節内注射を選択することがあります。コルヒチンは前兆〜発症初期に特に有用で、日本では0.5mgで開始し、効果不十分なら追加する低用量法が一般的ですが、透析中のかたは使用できません。あわせて、患部の冷却・患肢の挙上・安静などの非薬物療法も症状緩和に有効です。
高尿酸血症に対する治療・痛風発作の再発予防
尿酸降下薬は急性期が収まってから少量で開始し、数か月かけて段階的に増量します。薬剤は腎機能・併存症・相互作用を踏まえ、排泄促進薬(ベンズブロマロン、ドチヌラド)か生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタット)から選択します。
導入初期は発作が起こりやすく、1か月目に最多で、その後は減少する傾向です。再発予防には低用量コルヒチンの併用(コルヒチン・カバー)が有効で、3〜6か月の継続を目安とします。治療中は定期採血で肝腎機能などを確認し、安全性と効果を評価しながら適切量を維持します。
治療目標(数値)の考え方
国内ガイドラインは、痛風/痛風結節のある方を原則6.0mg/dL以下(結節ありでは5.0mg/dL以下を検討)に管理することを推奨しています。米国リウマチ学会も同様に、すべての痛風患者で6.0mg/dL以下、結節併存で5.0mg/dL以下を推奨しています。さらに、6.0mg/dL超では心血管イベントリスクが上昇する報告があり、再発予防に加えて心腎保護の観点からも厳密な尿酸管理が重要です。
高尿酸血症は生活習慣病のひとつ
2020年に策定された「循環器病対策推進基本計画」では、高血圧・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病などの重要な生活習慣病に加え、高尿酸血症も取り上げられました。尿酸塩の結晶は血管の中で炎症を引き起こし、高血圧や動脈硬化につながって、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めると考えられています。さらに、高尿酸血症は腎機能の低下とも関係が深く、いわゆる「痛風腎」と呼ばれる腎障害や、将来的な透析のリスクを上げる可能性があります。こうした理由から、尿酸値のコントロールは「発作を抑える」だけでなく、生活習慣病の予防や、心臓・血管・腎臓を守るためにも大切です。
痛風・高尿酸血症に対する生活習慣のアドバイス
生活習慣の見直し(飲料・食事・運動・体重管理)は、治療と再発予防の基本です。 お薬の有無にかかわらず、次の5本柱を無理なく続けていきましょう。
①飲み物の選び方(+脱水予防)
水分はこまめにとりましょう。 目安は1.5〜2L/日です(心臓・腎臓のご病気がある方は個別に調整します)。入浴・サウナ・運動・発熱時は特に意識して補給してください。
控えたい飲料:アルコール、砂糖や果糖で甘くした飲み物(清涼飲料・エナジードリンク・果汁飲料など)は尿酸を上げやすいため、量と頻度を控えめにしましょう。
おすすめ:水、炭酸水、無糖のお茶、無糖コーヒー(胃腸に問題がなければ)です。
②食事(エネルギー・プリン体・果糖に注意)
食事の目的は体重・内臓脂肪の適正化です。肥満は尿酸の産生増加と排泄低下の両方を招くため、DASH食・地中海食に“ゆるやかな減量”を組み合わせると、尿酸・血圧・脂質の改善に役立ちます。
プリン体は1日約400mgを目安に総量を管理。レバー・干物・魚卵・白子は量と頻度を控え、肉・魚は1食80g程度を意識。鶏むね・豆・野菜を活用し、ゆでこぼしや濃い出汁のとり過ぎは避けます。
野菜・果物・乳製品をしっかり取り入れ、食事の酸負荷を下げることで尿の酸性化を抑え、結石予防にもつなげます。

③飲酒
量が増えるほどリスクは上がります。 とくにビールは影響が大きいとされています。蒸留酒(ウイスキーなど)はプリン体が少なめですが、飲み過ぎれば同様に尿酸値は悪化します。飲む日は適量厳守、週に2日の休肝日を設け、量・頻度を整えましょう。
④運動
目的は肥満・メタボの改善です。 続けやすい有酸素運動を中心に取り入れましょう。散歩・速歩、自転車、水中歩行などを少し息が弾む程度で行うのがおすすめです。1日60分以上の身体活動(目標は約8,000歩)が目標です。長時間座るときは30分ごとに立って、数分ストレッチやスクワットで体を動かしましょう。短距離ダッシュや高強度の筋トレなど無酸素運動は尿酸を急に上げやすいため、尿酸が高めの方は注意が必要です。
⑤体重管理とお薬の継続
BMI 25未満を目標に、体重はゆるやかに減らすのがコツです。急な断食や極端な食事制限は発作を誘発しやすいため避けましょう。お薬は医師の指示どおりに継続し、自己判断での増減・中止はお控えください。

よくある質問(FAQ)
Q. 発作中に尿酸を下げる薬は始めますか?
A. 通常は炎症が完全に収まってから開始します。発作中の開始は悪化・遷延の恐れがあります。
Q. 目標とする尿酸値は?
A. 原則6.0mg/dL以下、結節がある場合は5.0mg/dL以下を目指します。到達後も維持が大切です。
Q. どの関節でも痛風になりますか?
A. 初発は母趾MTPが多いですが、足首・膝・手首・肘・指などさまざまな関節に起こり得ます。
参考文献)
・日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会.高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版[2022年追補版].東京:診断と治療社;2022.
・福内 友子.高尿酸血症の治療 食事・栄養・生活指導.日本臨牀.2024;82(6):878-884.帝京大学薬学部 臨床分析学研究室.(特に生活習慣のアドバイスについて参考にさせていただきました。医療関係者の方は是非ご一読ください)
・渡部 紗由美,今田 恒夫.高尿酸血症・痛風の疫学.日本臨牀.2024;82(6):834–839.
・寺脇 博之.尿酸.診断と治療.2025;113(増刊):78–81.