整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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2022.08.16 整形外科一般

当院で処方する鎮痛薬「NSAIDs」について解説

こんにちは、院長の曽我部です。今回は整形外科でよく使用する鎮痛薬「NSAIDs」についてご説明いたします。鎮痛薬の中でも特に使用頻度が多いものがNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬、エヌセイドと読みます)であり、その代表がロキソニンです。抗炎症、鎮痛、解熱作用を持つ薬剤の総称です。疼痛には侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛に分かれますが、NSAIDsは主に侵害受容性疼痛に作用を発揮します(下図参照)。

ロキソニンは薬局でも販売されておりなじみ深いお薬です。薬局で販売される薬は「OTC薬:Over The Counter」ともいわれ、薬局・薬店・ドラッグストアなどで処方せん無しに購入できます。

NSAIDsは主に侵害受容性疼痛に対して作用を発揮する

©整形外科学看護 2022, vol.27 no.9

WHOにおける鎮痛薬の分類には3段階

1番強力なもの:強い麻薬(モルヒネ)

2番目:弱い麻薬(コデイン)

3番目:NSAIDs(アスピリン、ロキソニンなど)

の順となっています。NSAIDsは3番目とはいえ、適切に使用すれば強力な鎮痛・抗炎症効果を有する薬剤です。

WHOによる鎮痛薬の強さ分類
WHOによる鎮痛薬の強さ分類

NSAIDsにはどのような薬があるか?

〇 ロキソプロフェン(ロキソニン)

多くの医療機関で最も多く使用されているNSAIDsです。胃腸障害がボルタレンより少ないとされています。適応疾患も広く、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、軽頚腕症候群、手術後ないし外傷後の疼痛など整形外科で取り扱う疾患を幅広くカバーしており、使用しやすい薬剤です。

〇ザルトプロフェン(ソレトン)

あまり聞き覚えのない薬剤かとおもいます。動物実験ではロキソプロフェンよりも強い鎮痛効果を示したとされます。適応疾患もロキソプロフェンとほぼ同等で幅広く使用できます。また発痛物質であるブラジキニン(BK)受容体の拮抗作用を有するため、BKによって誘発される痛みも抑制することが期待できます。

〇ジクロフェナク(ボルタレン)

強い鎮痛効果を持つ反面、消化管障害などの副作用の発言頻度はロキソプロフェンより高いと考えられています。定期内服するよりも、疼痛が強いときのみ使用する頓服使用に適しているといえます。

〇イブプロフェン(ブルフェン)

アセトアミノフェンでは鎮痛効果が不十分な小児患者に処方します。

〇チアラミド塩酸塩(ソランタール)

抗炎症作用はロキソプロフェンやザルトプロフェンに比べると穏やかで、そのぶん潰瘍も起こしにくいと考えられています。しかし全く起こさないというわけではないのでやはり潰瘍の既往を持っている方には禁忌となっています。マイルドな疼痛に対し処方を検討します。

〇 セレコキシブ(セレコックス)

多くの組織で炎症や疼痛の発現にかかわるCOX-2という物質のみを選択的に阻害します。ほかのNSAIDsは COX-1 も阻害してしまうのですが、これが副作用の潰瘍を引き起こす原因となっています。セレコキシブは潰瘍の発生率を減らし、かつ強力な鎮痛作用を有し1999年にアメリカで発売されたときはスーパーアスピリンとして一躍脚光を浴びました。セレコキシブは心血管系疾患の発症リスクを高める可能性があると警告されていますが、医学的な結論を未だ得ていません。

NSAIDsの薬剤間での除痛効果はどれくらいの差があるか?

実はそれぞれの薬剤間の除痛効果についてははっきりとした医学的根拠に乏しいのが現状なのです。

たとえば「がん性疼痛」に対してはNSAIDsの薬剤間での差はないとされていますし、慢性腰痛に対してもNSAIDsの薬剤間で有効性に差があるとするエビデンス(医学的根拠)はありません。しかし一般的にはボルタレンはロキソプロフェンより鎮痛効果が強く、副作用が表れやすいと考えられ使用されることが多いなど、臨床現場では医師の考えや経験に基づき使い分けがなされているという現状があります。

当院では処方に際して、除痛効果はもちろんですが特に副作用、有害事象の発現を念頭に置いて薬剤を選択しています。

NSAIDsの禁忌

NSAIDsを投与できない方(禁忌:きんき)をロキソプロフェンの添付文書より抜粋します。すべての副作用を記載しているわけではありませんのでご注意ください。

消化性潰瘍の既往がある患者(胃潰瘍、十二指腸潰瘍など)

重篤な血液の異常のある患者〔血小板機能障害を起こし、出血傾向が悪化するおそれがある〕

重篤な肝障害のある患者〔副作用として肝障害が報告されており、悪化するおそれがある〕

重篤な腎障害のある患者〔急性腎障害、ネフローゼ症候群等の副作用を発現することがある〕

重篤な心機能不全のある患者〔腎のプロスタグランジン生合成抑制により浮腫、循環体液量の増加が起こり、心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがある〕

本剤の成分に過敏症の既往歴のある患者(アレルギー歴がある方)

アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)

又はその既往歴のある患者〔アスピリン喘息発作を誘発することがある〕

妊娠末期の女性

また「ライ症候群」という稀な脳症を引き起こすリスクがあるため、15歳未満でインフルエンザ、水痘などのウイルス感染が疑われる患者さんでは投与できません。

思った以上に、注意事項が多くて驚かれたのではないでしょうか?

ロキソニンはドラッグストアでも気楽に購入できる薬ですが、思った以上に副作用や注意事項の多い薬剤なのです。とくに日常的に問題になりやすい副作用は「消化管潰瘍」「腎機能障害」です。

疼痛が長引いているからと言って漫然とロキソニンを内服し、胃潰瘍、消化管穿孔などの恐ろしい合併症を発症してしまった例は少なくありません。

特にご高齢の方では副作用があらわれやすいので、「少量から開始する、一日の内服回数を減らす、投与前に血液検査を行い、肝機能・腎機能をはじめとした異常がないかを事前にチェックしておく」ことが必要です。胃潰瘍、十二指腸潰瘍の既往がある方には、アセトアミノフェンなどほかの鎮痛薬を選ぶのが無難です。

NSAIDsは副作用に注意すべき薬の一つ

NSAIDsは「薬局で簡単に購入できる薬剤だが、その割に副作用も多く服用に当たっては注意すべき薬剤である」というのが本記事のメッセージです。漫然と長期に服用するととくにリスクが高くなります。たかが鎮痛薬と侮らず、服用に際しては医師の指示に従って内服しましょう。

参考文献)

慢性疼痛治療ガイドライン 2018

がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)

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