DISEASE DETAILS 疾患一覧
股関節の痛み
単純性股関節炎
単純性股関節炎とは
比較的突然に股関節の疼痛を生じる疾患です。下肢痛や歩行障害を訴えて医療機関を受診することが多いとされます。2歳から12歳の間に発症することが多く、平均すると5歳前後です。男児の発生率が女児に比べて2~3倍多いとされています。
単純性股関節炎の原因
原因は外傷、アレルギー、感染など多岐にわたると考えられていますが、詳細は明らかにはなっていません。また単純性股関節炎には明確な診断基準がなく、他の疾患を除外できれば本症と診断される「除外診断」です。
単純性股関節炎の症状
比較的突然に下肢痛や股関節痛を訴えて医療機関を受診することが一般的です。また、オムツを替える時や着替える時に泣くこともあります。急激な股関節痛が起こり、歩行が困難になることがあります。呼吸器感染が先行することがあるため、微熱が見られることもありますが、患部の腫れや発赤、熱感は認められません。発熱もほとんど見られません。
単純性股関節炎との鑑別が必要な疾患
単純性股関節炎の診断にあたっては、化膿性関節炎との鑑別が最も重要です。特に発熱が伴う場合は、化膿性関節炎を疑い、迅速に対応する必要があります。また、膝の痛みを訴えて受診する例もあり、その場合には膝関節に異常がないかも確認します。股関節水腫が2週間以上引かない場合には、初期のPerthes病も鑑別に考慮する必要があります。さらに、長引く股関節痛で股関節炎が疑われた場合に、白血病が隠れていることもあると報告されています。
単純性股関節炎の検査
単純X線では異常がなく、他の疾患との鑑別のために施行します。
血液検査(血算、生化学検査、血液像、血沈、CRP)は化膿性股関節炎との鑑別が困難な時に検討します。超音波は関節貯留の確認には簡便ですが、手技に熟練が必要で、大腿骨頭や大腿骨頸部、関節軟骨、成長軟骨を映し出し、関節液の貯留(水腫)の有無を調査します。水腫が見られる場合にはultrasonic joint spaceの計測を行います。改善の過程や再燃の有無も確認できます。
Cairdは2006年に化膿性股関節炎の予測因子として、発熱が38.5℃以上、立位不能なほどの強い肢痛、白血球数が12,000/mm³以上、赤沈1時間値が40mm/hr以上、CRPが2.0mg/dL以上の5項目が挙げ、3項目を満たす場合、可能性股関節炎の診断率が80%を超えると述べています。
単純性股関節炎の治療
単純性股関節炎であれば、手術などの特別な治療は必要ありません。通常は股関節を安静にしておくことで、数日から長くても2週間程度で症状が軽快します。症状が強い場合は、入院して介助牽引を行うことがあります。数回の再発を繰り返すこともありますが、予防法はありません。しかし、予後は良好です。
参考文献)
・小児科臨床 Vol.71 増刊号 2008
先生から一言
単純性股関節炎は2~12歳の子どもに突然発症する股関節痛が主症状です。治療は安静のみで数日~2週間程度でよくなる疾患です。感染による股関節痛である化膿性股関節炎を除外することがとても重要で、見逃すと重大な後遺症を残す可能性があります。