整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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肩の痛み

肩インピンジメント症候群

肩インピンジメント症候群(Shoulder impingement syndrome :SIS)とは

「インピンジメント」とは「衝突」「挟み込み」のことです。腱板筋の過度な使用、例えばスポーツや仕事によって、筋肉の疲労や緊張が生じることがあります。その結果、上腕骨頭が正常な位置からずれたり(骨頭の挙上時の上方移動)、肩峰に骨の出っ張り、いわゆる骨棘が形成されることがあります。このような変化によって、腱板や肩峰下滑液包が上腕骨や肩峰に挟まれることがあり、これが炎症や腱板の損傷を引き起こします。結果として、肩の痛みや腕を上げるのが困難になることがあり、これをインピンジメント症候群といいます。

インピンジメントは上腕骨と肩峰、腱板、滑液包が「ぶつかる」ことにより起こる病気です

出典)整形外科看護 2022 vol.27 no.2

診察では、肩の動きの範囲、可動域をチェックします。外転位、屈曲位、内転位での疼痛や筋力を評価し、インピンジメントの存在を判断します。特に野球に代表されるオーバーヘッド競技者の場合、肩甲胸郭の機能障害が原因でインピンジメント症状が生じることが多いとされます。インピンジメント症候群との鑑別を要する疾患には肩関節周囲炎(40肩、50肩)腱板断裂石灰沈着性腱板炎の3つが主にあげられます。

肩インピンジメント症候群の症状

肩のインピンジメント症候群の主な症状は、腕を頭上に持ち上げたり、後ろに手を伸ばしたりしたときに発生する痛みです。この痛みは肩、腕の上部近く、または腕の外側に現れやすく、特に夜間に痛いほうの肩が下になったときによく起こります。

投球動作を行うスポーツでは、肩のこわばりやウォームアップ期間が長引く傾向にあり、腕を後ろに回して投げ準備をするときや、投げる動作を始めるときに痛みが生じやすくなります。テニスやバレーボールのようにサーブを行うプレイヤーの中には、サーブのフォロースルーや終了時に痛みを訴える人もいます。最初は痛みの位置を特定するのが難しいですが、時間が経つにつれて、後方インピンジメントでは肩の後部に痛みが集中するようになります。肩峰下インピンジメントの場合、屈曲や外転の制限が特に強く出ることが知られており、これは凍結肩との鑑別に有効です。

野球やテニスのサーブなどの動作が痛みの原因となります

肩インピンジメント症候群の検査

身体診察では、インピンジメントの原因となる「肩甲胸郭関節の硬さ」「肩甲骨の上方回旋不足」などの機能障害の有無を評価します。Neerインピンジメントテスト(肩甲骨を押し下げ、もう片方の手で外転させる。上腕骨を肩峰下面に押し当てるテストであり、外転90°を過ぎたあたりで疼痛がみられれば陽性)、Hawkinsインピンジメントテスト(屈曲90°まで腕を上げ、内旋をさせ、上腕骨の大結節を烏口肩甲靭帯の下面に押し当てる。疼痛がみられれば陽性)が陽性になるかを確認します。診断の補助として、肩峰下滑液包に局所麻酔薬とステロイドを注射することで、痛みや可動域が大幅に改善すると、本症を疑うことができます。

Neer test:疼痛が誘発されれば陽性(©ORTHOFIXAR. Neer Test.)

肩インピンジメント症候群の画像検査

レントゲン(X線)検査、MRI、超音波検査が診断に有効です。

X線撮影では、Scapula-Y撮影は、肩峰の形状、肩峰前縁の骨棘を確認します。一方、肩ゼロポジションの撮影は関節の安定性の確認に適しています。関節が不安定になると、上腕骨頭の中心からの垂線が肩甲骨臼蓋の外側に移動する現象(Slipping)が観察されることがあり、インピンジメント症候群の原因となります。また腱板の石灰沈着や上腕骨大結節の骨折なども評価できます。

超音波検査も有効です。肩峰下滑液包の正常な超音波所見では、三角筋と腱板の境界が鮮明な高エコーの線として映し出されますが、インピンジメント症候群の際は、この境界が低エコーになります。また、腱板の肥厚や浮腫は腱板炎の特徴として認識され、腱板関節面の断裂がある場合、同様の肥厚の所見が観察されます。超音波検査は、投球障害に伴う炎症の評価に非常に役立ちます。

MRI検査は、腱板や滑液包の病変だけでなく、関節唇の異常も正確に捉えることができます。

肩インピンジメント症候群の治療(手術以外の保存治療)

安静時や夜間の痛みに対して、内服や外用の消炎鎮痛薬を使用したり、局所麻酔薬とステロイドの肩峰下滑液包への注射を行います。投球などオーバーヘッド動作を伴うスポーツは2-4週の中止期間をとり痛みが改善するか観察します。

リハビリは特に有効な保存治療で、手術を回避するために必要な治療です。疼痛の強い急性期のリハビリの目標は、腱板強化訓練によって「炎症を抑制し、二次的なダメージや機能低下を最小化すること」です。炎症がある段階では、真の機能障害の評価は難しく、痛みの軽減を最優先にし、肩関節への過度な刺激を避けることが大切です。従って疼痛が強い急性期ではとくにぐいぐいと無理に動かすことにより疼痛がよりひどくなってしまうため注意が必要です。特に中高年では肩関節、肩甲骨や胸郭の動きが悪くなっていることが多く、上腕骨の求心性が保てなくなります。したがって肩の動きだけではなく、肩甲骨や胸郭の柔軟性に問題がないかも評価し、ストレッチすることが大切です。

リハビリによって肩関節の機能不全を修正しても、解剖学的破綻による肩峰下インピンジメント(関節唇損傷や腱板関節面断裂を含む)が残存する場合が手術適応となります。

肩インピンジメント症候群の治療(手術加療)

症状が保存的治療にもかかわらず改善しない場合、肩関節鏡による肩峰下除圧術が検討されます。腱板断裂や腱板の石灰沈着、上腕骨大結節骨折後の変形癒合などの機械的要因によるインピンジメントは手術が必要となる可能性が高くなります。骨と靭帯、骨同士の衝突を解消するために靭帯を切断し、骨を削る肩峰下除圧術などの手術があります。腱板断裂を伴う場合はスーチャーアンカーなどを用いて腱板修復手術を併用することもあります。

参考文献;

・菅谷啓之. 臨床スポーツ医学 Vol 36 No 2(2019-2)

・中川照彦. 超実践 肩の外来診療 メジカルビュー社

・ORTHOFIXAR. Neer Test.

・保存療法で治す運動器疾患.全日本病院出版会

先生から一言

肩インピンジメント症候群は特に肩関節周囲炎や腱板断裂との鑑別が重要です。症状が遷延しやすく、早期の診断と治療が大切です。長期化する前に受診しましょう。

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