整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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膝の痛み

膝伸展機構障害

膝伸展機構障害(Anterior Knee Pain)とは

膝伸展機構障害は、スポーツ活動から生じる「膝蓋骨や膝蓋腱周辺の疼痛」を引き起こすスポーツ障害のです。成長期には筋肉の柔軟性が低下し、スポーツ活動によるオーバーワークで障害が引き起こされます。成長期によく見られる膝伸展機構障害には、「Osgood-Schlatter病」、「Sinding-Larsen-Johansson病」、「有痛性分離膝蓋骨」があります。骨端線が閉鎖した後の成人では、ジャンプ動作などの繰り返しにより「ジャンパー膝」とよばれる「膝蓋腱炎」が起こります。膝伸展機構障害に対しては、障害の原因および重症度に応じて適切なリハビリテーション治療を行うことが、早期のスポーツ復帰に繋がります。

膝をのばす伸展機構の特徴:人体最大の筋肉と、最長の骨

膝伸展機構は、大腿四頭筋の筋収縮によって膝関節を伸ばすシステムです。大腿四頭筋は人体で最大の骨格筋であり、大腿骨は人体で最も長い長管骨です。さらに、膝蓋骨は人体で最大の種子骨であり、膝伸展機構には非常に大きな負荷がかかります。大腿四頭筋腱は、膝蓋骨の前面を覆う腱膜を介して膝蓋腱に連続しており、膝蓋腱は脛骨結節に付着しています。

膝蓋骨が膝伸展機構に介在することで最も重要な機能は、伸展機構のレバーアームを増加させ、てこの原理によって大腿四頭筋の力の効率を高めることです。膝蓋骨の厚みにより、膝関節が伸び縮みする際に膝蓋腱が大腿骨と脛骨の接点から離れることができ、これによって膝蓋腱のモーメントアームが増加します。また、膝蓋骨は大腿四頭筋からの力を一方向に集中させる機能も持っています。

こどもに起こりやすい膝伸展機構障害

繰り返しのストレス刺激により成長軟骨の中心である「骨端核」に障害が起こります。例えば、「Sinding-Larsen-Johansson病」では膝蓋骨下端の骨端核に、「Osgood-Schlatter病」では脛骨粗面の骨端核に、「有痛性分離膝蓋骨」では膝蓋骨上外側の骨端核に障害が発生します。膝蓋骨や脛骨粗面に骨端核が出現する前は、線維軟骨が主な構成要素であり、この時期には下肢の筋力も強くないため、膝伸展機構障害が起こることは稀です。膝蓋骨には3~5歳で骨端核が現れ、12~14歳ごろに上外側の骨端核が最後に癒合します。脛骨粗面では7~15歳で骨端核が現れ、14~16歳で骨端軟骨が閉鎖します。下前腸骨棘では13~15歳で骨端核が現れ、16~18歳で骨端軟骨が閉鎖し、膝伸展機構の骨化が完了して、大人の骨になります。

成人に起こりやすい膝伸展機構障害

成長が完了した成人では、腱骨移行部が力学的に最も脆弱な部位となり、大腿四頭筋腱から膝蓋骨、膝蓋骨から膝蓋腱が病変部となります。膝蓋腱炎が代表的な疾患です。

膝伸展機構障害や外傷の診断を進める際には、発症年齢、疼痛部位が大切です。以下、それぞれの病気について解説します。(オスグッド病についてはこちらのページをご覧ください

「Sinding-Larsen-Johansson病」とは

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病(Sinding-Larsen-Johansson病)は、若年者の膝蓋骨の下極に痛みが出る疾患です。10~15歳の小中学生に好発し、Osgood-Schlatter病と比較して発生頻度は低いとされています。成長期における膝伸展機構の過緊張状態で、大腿四頭筋からの反復する牽引刺激によって発生すると考えられています。鑑別診断には、小児の外傷による「sleeve骨折」や「膝蓋腱炎」などがあります。

症状としては、膝蓋骨下極に限局した疼痛、腫脹、熱感などが現れます。運動時やジャンプ動作で疼痛が誘発されます。

画像所見では、単純X線像で膝蓋骨下極に不整像、石灰化像、骨化像が認められますが、ほとんどの病変は癒合します。

治療は、炎症や症状の強さに応じて、スポーツ活動の中止や安静を指示します。疼痛が引くまではスポーツの休止が望ましいでしょう。症状はOsgood-Schlatter病よりも軽微で、予後良好です。

「有痛性分離膝蓋骨」とは

有痛性分離膝蓋骨(分裂膝蓋骨とも呼ぶ)は、膝伸展機構の副骨化核への緊張の増加により、膝蓋骨の骨化異常が生じる疾患です。外側広筋による膝蓋骨の外側への過度の牽引力、膝蓋軟骨の上外側への過度の圧迫力や、分裂部の異常な可動性などが疼痛の原因とされています。

ほとんどの場合は無症状ですが、スポーツ活動による過度の使用や外傷をきっかけに痛みを伴うようになります。膝関節の深屈曲動作やジャンプ、着地動作時に分離部の疼痛を感じやすいようです。

画像診断には、単純X線でのSaupeによる分類が用いられます。

治療は、膝伸展機構の過緊張を軽減するためのストレッチングが有効です。痛みが改善しない場合、分裂骨の摘出手術や外側膝蓋支帯の切離手術、外側広筋の剥離手術、骨接合手術を行うことがあります。

「膝蓋腱炎」とは

膝蓋腱炎は、ジャンプやランニングなどのスポーツ活動によるオーバーユースが原因で起こります。腱骨付着部や腱実質の微小な断裂や損傷により、運動時に膝の前面に痛みを感じます。大腿四頭筋の筋力低下、不適切なトレーニングの負荷や時間、膝蓋骨の低位置などがリスク因子です。伸展機構のレバーアームの支点となる膝蓋骨の下端に過度なストレスが集中しやすく、炎症が生じやすいと考えられています。

画像診断では、単純X線で腱付着部の骨変化や膝蓋腱に一致して石灰化が見られることがあります。MRIでは、膝蓋腱の付着部から実質にかけての肥厚を認め、変性が進むとT2強調像で腱内部の高信号を確認できます。

治療は、膝関節の安静、運動前の大腿四頭筋のストレッチングや運動後のアイシングです。大腿四頭筋の筋力を強化することが、長期的な疼痛の改善に効果的です。筋力訓練の方法として、従来から行われている遠心性筋収縮運動がリハビリとして有効で、近年では、等尺性筋収縮運動も疼痛や機能の改善に効果が期待されています。当院では、症状に合わせたアスレチックリハビリテーションを実施しています。

以下は専門的なリハビリテーションの内容です。

ご興味のある方はお読みください

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安静が必要な場合のリハビリテーション

スポーツを休止し、疼痛を引き起こす動作は行わないように注意します。伸展機構への負担を軽減させるため、膝関節周囲の大腿四頭筋およびハムストリングの柔軟性を高めるためのストレッチングを行います。筋肉を伸ばした状態で30秒程度静止するスタティックストレッチングが柔軟性向上に有効です。大腿四頭筋のストレッチングで疼痛が強い場合は、側臥位で行います。股関節を軽度屈曲させて膝関節を他動的に屈曲させることで、大腿四頭筋の遠位のストレッチングが可能です。

症状が改善傾向にあれば、側臥位で股関節を伸展させた状態での膝関節の屈曲によるストレッチングに移行します。ハムストリングの伸張が不十分な場合は膝関節痛の原因となるため、同様にストレッチングを行います。膝蓋骨の可動性が悪い場合は、膝蓋骨周囲のモビライゼーションを行い、膝関節の伸展屈曲における膝蓋骨の柔軟性を高めます。膝関節への過度な負担を避けるためには、膝関節周囲だけでなく、股関節や足関節周囲の筋の柔軟性も向上させます。ストレッチング時の疼痛が改善傾向にあれば、さらに効果の高いストレッチング方法に移行します。仰臥位や伏臥位での大腿四頭筋のストレッチングを行います。筋力強化訓練としては、等尺性運動から始め、徐々に抵抗運動に進みます。

競技復帰へ向けたリハビリテーション

膝関節を含む体幹、股関節、足関節の柔軟性を高めます。筋力強化訓練としては、スクワット動作などを慎重に行います。スクワット動作は、立位からしゃがむ動作を行う際に大腿四頭筋の遠心性筋収縮運動を引き起こします。前方に25度傾斜した板の上でのスクワット動作は、大腿四頭筋への負荷を増やし、効果的です。トレーニングは強い疼痛がでない範囲内で、1セット15回×3セットを4~24週間行います。等尺性筋収縮運動は、遠心性筋収縮運動に比べて短期間での疼痛緩和に適しているとされ、1回の運動で疼痛緩和効果が約45分間持続するとの報告もあります。筋収縮運動は、正しい動作を身につけ、強い疼痛を引き起こさない程度に行うことが重要です。

疼痛なく動作ができ、下肢の筋力および柔軟性が十分であれば、ジャンプ動作やダッシュ動作などを行います。ジャンプ動作では、着地時に下肢が外反位にならないように中立の着地姿勢を習得します。また、着地時に股関節の屈曲が浅く、膝関節の屈曲が深い場合は、後方重心となり、膝関節に負担が大きくなるため、膝関節だけでなく股関節の屈曲にも注意し、正しい重心の位置を保持します。足関節の柔軟性が低下している場合は、下腿三頭筋の緊張により足関節の十分な背屈ができず、後方重心の原因となることにも注意が必要です。伸展機構の圧痛や動作時痛が消失し、ダッシュ動作などで疼痛が生じなければ競技復帰を許可します。

参考文献)

・MB Med Reha No. 258: 23-29, 2021

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