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「関節の痛み、こわばり」は「更年期障害」の症状のひとつです
こんにちは、三国ゆう整形外科・院長の曽我部です。
「関節の痛み、こわばり」が「更年期障害」の症状のひとつであることをご存じでしょうか?
更年期障害は、閉経を迎える前後10年程度に起こる症状です。日本人女性ではおおむね50~51歳が平均の閉経年齢といわれており、この時期には体調に様々な変化が現れます。 よく知られているのは、のぼ一般的に閉経前後10年ほどを指す更年期には、女性ホルモンの減少により体調が大きく変化します。のぼせやほてりといったホットフラッシュ、イライラなどの精神症状は有名ですが、実は整形外科領域の症状も深く関わっています。具体的には、指の第一関節が腫れて変形するヘバーデン結節、第二関節に起こるブシャール結節、指が引っかかるばね指、手首が痛むドケルバン病(腱鞘炎)などが挙げられます。
これまでは仕事や家事による手の使いすぎ、あるいは加齢のせいとして見過ごされがちでしたが、近年の研究ではエストロゲンの低下が関節や腱の炎症を引き起こす要因であることが分かってきました。当院でも、更年期世代の女性から「手が痛い」「指が変形してきた」という切実なご相談を数多くいただいております。
早期に適切なケアを始めることで、将来的な関節の変形を予防し、痛みを和らげることが可能です。今回のブログでは更年期になぜ関節痛症状が起こりやすくなるのか、またその対策について詳しく解説いたします😊
【更新情報:2025年12月23日】
本記事に、更年期と関節症状の関連性を示す最新の文献データを追記しました。専門的な知見に基づき、より詳しく原因と対策を解説しています。現在、痛みやこわばりを感じている方はぜひ改めてご一読ください。

なぜ、更年期に手指の病気が増えるのか?
関節の不調は女性ホルモン、とくに「エストロゲン」の変化と濃厚に関連していることが明らかとなりつつあります。 更年期前後において、短期間にエストロゲン濃度が大きく変化(多くの場合は急激に減少)することは、関節や腱、それらを包む滑膜(かつまく)にネガティブな影響を及ぼすのです。
このように、更年期以降にみられる手指の痛み・こわばり・しびれ・関節が太くなってくる感じを、手外科の分野では「Menopausal Hand(メノポーザルハンド/メノポハンド)」と呼び、日本手外科学会でも更年期症状の一つとして啓発が進められています。

なぜ女性ホルモンの変動が関節の不調を引き起こすのか?
エストロゲンはエストロゲン受容体と結合することによってその作用を発揮します。
エストロゲン受容体には「α」「β」の2種類があります。
αは子宮,卵巣,乳腺,腎臓副腎などに存在し、βは骨,脳,肝臓前立腺,血管壁,肺,甲状腺膀胱などに加え「関節包、腱鞘、靱帯、滑膜」に存在します。滑膜は軟骨の働きを助ける薄い膜で関節を裏打ちしており、潤滑油である関節液を分泌して、軟骨へ栄養を補給します。エストロゲンが不足すると滑膜の働きが低下し、体が重く感じたり、手がこわばったりします。またエストロゲンには腱の保護作用があることも判明しています。
すなわち、エストロゲン受容体「β」に結合するエストロゲン量が減少することが更年期の関節の不調に大きく関わっているといえます。女性のエストロゲン分泌は25歳をピークに減少し始め、平均50歳前後で最終月経を迎え、大きく減少します。

更年期の手指の痛み「メノポハンド」とエクオールの効果
更年期特有ののぼせ(ホットフラッシュ)にはホルモン補充療法(HRT)が有効ですが、手指の痛みや腫脹、変形性手指関節症への効果については、国内での検証が待たれている段階です。HRTは乳がん等のリスクを懸念される方も多いため、現在、安全な代替療法として注目されているのが「エクオール」です。
エクオールは大豆イソフラボンが腸内細菌で代謝されて生まれる成分で、体内で女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きをします。閉経後のホルモン減少を補い、関節の不調を和らげる効果が期待されています。自費診療なので月々4320円(大塚製薬、エクエル)とやや高額ですが、値段以上の価値はあると考えています。お肌や髪がつやつやするなど、女性として見た目が若返るという嬉しい効果もあります。肌を美しく保つという意味合いでも、高額な化粧品の代わりに検討する価値は十分すぎるほどにあります。

指の変形を食い止めることはできる?
手指の不調で整形外科を受診しても「使い痛み」「加齢によるもの」と言われ有効な治療方法を提示されないことも多くあります。手指、手関節の変形は短期間で急激に起こるものではなく、更年期症状として始まった関節炎や滑膜炎が長期間にわたって持続し続けることが変形の原因になると考えられています。平瀬らは「最初は指関節の腫脹や痛みだけであったものが未治療のままおかれることで、7~10年程度経過して関節の変形などの非可逆的変化が現れること」があると報告しています。
そうであるならば、更年期の手指の痛み・腫脹を適切に治療すれば、長期的には続く手指の変形性関節症の予防につながる可能性があるといえます。
当院では手外科の手術経験の豊富な院長が診療にあたり、症状の改善、将来的な変形予防に向けた治療を包括的にデザインします。また関節リウマチ、その他の膠原病など、更年期の手指の不調とよく似た症状を引き起こす疾患を除外することも大切で、その多くは当院での血液検査で見分けられます。
当院では手指の疼痛や更年期障害に有効な漢方薬の処方も積極的に行っております。当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、抑肝散(よくかんさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などに加えて、手指の関節痛に有効な桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、桂枝茯苓丸加ヨクイニン(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)などの漢方薬を病状や、からだの状態に合わせて処方を行います。「薬はできるだけ飲みたくないけど、漢方薬なら飲んでみたい」、「西洋薬ではなく漢方薬を使いたい」という方の希望にもお答えできます。
手指の痛みは、人にはなかなか分かってもらえずつらいものです。自分で抱え込んで悩まず、まずは院長にご相談ください😊
参考文献
平瀬 雄一:「“メノポハンド”は未病の段階 早めの気づきと対応がポイント」,『ドラッグマガジン』68巻7号,pp.12-15,2025.
平瀬雄一ら.更年期と手の障害.LOCOCURE, voL8, No.3, 2022.
イキイキからだのつくり方 手指編. からだにいいこと.
婦人科漢方. 寺内公一ら. 薬局 74(1): 104-110, 2023.
吉田祐文. 整形外科における関節痛の診断と漢方治療 .中医臨床 44(3): 316-320, 2023.