整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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2024.12.19 整形外科一般

この症状って、神経痛?

「この症状って神経痛ですか?」という質問をよく受けます。典型的な、びりびりする感覚があれば神経痛であると実感しやすいですが、それだけではありません。今日はいわゆる「神経痛」、正確には「神経障害性疼痛」と言われるものについてお話いたします。痛みの特徴と、治療法についても解説しますので、ご興味のある所だけでもぜひご覧ください。

神経障害性疼痛の特徴

痛みには主に、①神経障害性疼痛、②侵害受容性疼痛、③痛覚変調性疼痛の3つがあります。

神経痛、いわゆる神経障害性疼痛の特徴は、冷たいものによる刺激によって疼痛が誘発される、発作的に痛みが出る(特に誘引がはっきりせずに出現する)、焼けつくような灼熱痛がある、疼痛を伴う部位の知覚のにぶさ(触られている感覚がわかりにくい、冷たい、熱いを感じにくい)、アロディニア(本来は痛みを引き起こさないような刺激(例えば、軽く触れる、服が皮膚に触れる、風が当たるなど)によって痛みを感じる状態のこと)を伴う頻度が高いということです。

ご自身の症状がこれらのような特徴を満たすならそれは神経痛である可能性が高まります。しかしこれらの特徴を満たすからといって必ず神経痛と断言できるわけではないことに注意してください。診断には身体診察、X線検査を行い総合的な判断が求められます。

臨牀と研究 101(6): 665-668, 2024.より抜粋

神経障害性疼痛のメカニズム

神経障害性疼痛は、「体性感覚神経系の病変や疾患によって起こる疼痛」と定義され、末梢神経系と中枢神経系のいずれの障害によっても生じます。神経系の可塑的な異常が原因で神経症状が生じることで、痛みやアロディニア(触刺激による疼痛の誘発)、痛覚過敏が起こると考えられています。神経系は体性感覚細胞自体の易興奮性以外にも、グリア細胞が神経興奮を調節することが明らかになっています。さらに、脊髄に入力される痛み信号の関連性が変化し、過剰な痛みが強調されることで中枢性に増幅される「背側角ネットワーク」という神経ネットワーク機構が存在し、さらにこれに下行性疼痛抑制系も関与します。体性感覚神経系の障害によって下行性疼痛抑制系の機能が弱まることも知られており、これも神経障害性疼痛の発症機序の一つであると考えられています。

これらの痛みの発症・増悪・維持機構においては、生理活性脂質のリゾホスファチジン酸(LPA)シグナリングが重要な役割を果たしています。LPA受容体の遺伝子多型は神経障害自体の重症化や痛みの重症化と関連していることが明らかになっており、神経痛の感じやすさや、治療への反応性が遺伝的な訴因によって決定されている可能性を示唆しています。

神経障害性疼痛に対する薬物療法

神経障害性疼痛に対する治療法の中では、薬物療法が最もエビデンスレベルが高く、標準的な治療法として推奨されています。

①神経障害性疼痛の第一選択薬

第一選択薬として「カルシウムチャネルα2δリガンド」、「セロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」、「三環系抗うつ薬(TCA)」が選ばれています。

カルシウムチャネルα2δリガンド=ミロガバリン(タリージェ)は神経障害性疼痛に特化した特徴があるためもっともよく使用されます。痛みやしびれの抑制効果にも優れており、真っ先に使用したい薬剤です。副作用では「眠気」と「浮動性めまい」の頻度が最も高いとされています。そのため車や銃器の運転など眠気が致命的なミスにつながる職種の方では内服は慎重に行わねばなりません(絶対に内服できないということではありません)。私が処方するときは、次の日に眠くなっても大丈夫な日の夜に試しに内服してみて、問題なければ一日2回内服にする、もしくはよるだけの内服にするようにしています。体が慣れてきてから回数や量をゆっくり増やすようにしています。

いずれの副作用も、処方開始および増量後数日間で減ってい来る傾向にはあります。そのため、服薬初期には眠気、ふらつきが現れる可能性があるため転倒しないように注意しつつ、服薬を継続してもかまいません。また、その鎮静効果は用量依存性ですので、容量が増えれば増えるほど効き目は強くなりますが副作用も強くなるので注意が必要です。

神経障害性疼痛の薬に抗うつ薬があることに驚かれた方も多いのではないでしょうか?SNRIのデュロキセチンは抑うつ症状の改善に伴う間接的な鎮痛効果ではなく、下行性疼痛抑制系の機能を賦活することにより鎮痛作用を発揮します。服薬初期に眠気が出現することがあります。TCA(特にアミトリプチリン)も複数の本格的な神経障害性疼痛疾患に対して有用性が示されていますが、高用量で心毒性による心突然死のリスクが高まること、特に65歳以上では注意を要することが示されており、本邦ではほとんど用いられていません。

②神経障害性疼痛の第二選択薬

第二選択薬はワクシニアウイルス接種反応変症皮疹由来治療薬剤(ノイロトロピン®)と弱オピオイド鎮痛薬が分類されるトラマドールが挙げられています。ノイロトロピンは下行性疼痛抑制系の機能賦活をしながら、COX-2阻害効果による抗炎症作用が神経症状を改善すると考えられています。

ノイロトロピンは特に安全性に優れており、CKD(慢性腎臓病)、高齢で腎機能が低下している人でも安全に使用が可能です。そのため、私はタリージェに加えて第一選択としてノイロトロピンを選択することも多いです。

トラマドールはオピオイド受容体作動薬であるため他剤が無効だった場合の有効性が示されていること、用量依存性に鎮痛効果が期待できることが特徴です。トラマドールの副作用として吐き気や浮動性めまいが挙げられることが多いですが、トラマドールはセロトニン受容体に対して完全作動薬として働くため鎮痛効果に天井効果がなく、用量による鎮痛効果の調整が容易です。

③神経障害性疼痛の第三選択薬

強オピオイド鎮痛薬(いわゆる麻薬!)は、長期使用時における精神依存などがあることから第三選択薬に位置づけられています。

国内ではオキシコドン徐放剤(オキシコンチン®TR錠)とフェンタニル貼付剤、ブプレノルフィン貼付剤(ノルスパン®テープ、腰痛症、変形性関節症のみ保険適用)が該当します。

これらを考慮し、オピオイド鎮痛薬は適切な管理のもと神経障害性疼痛に対する鎮痛効果が高いと考えられていますが、本邦では神経障害性疼痛に対する投与は末期がん患者など、処方されるケースは限られています。

おわりに

当院では神経障害性疼痛に対する治療経験の豊富な医師が診療に当たります。薬剤はいずれも効果と副作用のバランスをとることが大切で、症状に応じて柔軟に薬剤変更したり、量の調節が必要なのです。

神経痛にお悩みの方は、まずは当院を受診いただき、症状についてご相談ください🌸

参考文献

・月刊薬事 66(8): 1466-1470, 2024.

・臨牀と研究 101(6): 665-668, 2024.

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