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子供の足の「O脚」は放っておいてもよいの?
「子供の歩き方が気になる」「足の形が歪んでいる気がする」
乳幼児期から小学生くらいのお子様を持つ親御さんから、このようなご相談をいただく機会は本当にたくさんあります。実は、子どものO脚やX脚のほとんどは、成長のステップとして誰にでも起こる「自然な変化」です。基本的にはそのまま様子を見ていて大丈夫なケースが大半ですが、まれに、早めの治療が必要な「病気によるO脚」が隠れていることもあります。
今回は、下肢アライメント(骨格の配列)の正常な発達段階と、整形外科領域における専門的な検査・治療について整形外科専門医が解説します。「うちの子の脚、放っておいても大丈夫?」と不安に思っている親御さんは、ぜひ参考にしてみてください😊

記事監修:曽我部 祐輔 医師 (三国ゆう整形外科 院長/日本整形外科学会認定 整形外科専門医)
1. O脚・X脚とは?年齢による脚の形の自然な変化
子どもの脚の形(アライメント)は、年齢とともに決まったサイクルで変化していきます。この「自然な変化のパターン」を知ることが大切です。
年齢による脚の形の移り変わり
- 新生児期~1歳半ごろ(自然なO脚) お腹の中にいたときの姿勢や、すねの骨が内側にねじれている影響で、この時期の赤ちゃんの多くには自然なO脚(生理的O脚)がみられます。
- 1歳半~2歳ごろ(まっすぐな脚へ) 歩き始めるようになると、脚のラインは少しずつまっすぐに近づき、O脚は自然に良くなっていきます。
- 2歳~4歳ごろ(自然なX脚) 骨の成長に伴うねじれの変化によって、今度は一時的にX脚が目立つようになります。だいたい3歳ごろにX脚のピークを迎えます。
- 4歳~7歳ごろ(大人の脚の形へ) 目立っていたX脚が少しずつ改善していき、7歳ごろまでには大人と同じ「わずかなX脚(生理的外反)」に落ち着きます。
正常と異常を見分ける計測基準(専門的な内容です)
臨床的には、以下の指標を用いて客観的に評価します。
| 変形タイプ | 評価指標 | 正常範囲の目安 | 病的と判断する基準 |
|---|---|---|---|
| O脚(genu varum) | ICD(内顆間距離) ※両膝の内側の突出部間の距離 | 1歳半頃までで2cm以内 (指2本分:2横指) | 3cmを超える場合、または1歳半を過ぎても改善・悪化傾向にある場合 |
| X脚(genu valgum) | IMD(足関節内果間距離) ※両内くるぶし間の距離 | 4歳頃で6~8cm以内 (指3本分:3横指) | 8cmを超える場合、または7歳を過ぎても改善・悪化傾向にある場合 |
O脚の時期にみられる歩き方の特徴
O脚の時期には、すねの骨が内側にねじれている影響で、つま先が内側を向く「内股歩き(うちわ歩行)」になりやすくなります。これは、生まれた時には約40度ある太ももの骨のねじれが、大人になるにつれて10〜15度へと自然に減少していく発達の過程が関係しています。
また、乳幼児期によくみられる足の裏が平らな「やわらかい扁平足(柔軟性扁平足)」や、一時的な「つま先歩き」も、その多くは成長とともに自然に良くなっていきます。ちなみに、土踏まずは2〜3歳ごろからでき始め、10〜13歳ごろに完成します。
2. 自然な変化ではなく「病気」が隠れているサイン
もし、脚の開きが目安(O脚なら両膝の間が2cm以上、X脚なら両内くるぶしの間が6〜8cm以上)を超えている場合や、「左右で形が違う」場合は、自然な成長を妨げる何らかの病気(病的因子)が隠れている可能性を疑う必要があります。
注意すべき主な病気や原因
- ビタミンD欠乏性くる病(骨の代謝の病気) :骨を硬くするカルシウムやリンがうまく沈着せず、骨格が変形してしまう病気です。近年、過度な紫外線対策による日光不足や、偏食・アレルギーによる栄養の偏りから、この病気になるお子様が増えており注意が必要です。
- ブラウント病(脛骨内反症): 肥満や関節のゆるみなど、膝への過度な負担が原因で、すねの骨(内側の成長軟骨)の成長が妨げられ、変形が進行してしまう病気です。
- その他の原因 :遺伝性の骨の病気(軟骨異形成症など)、腫瘍、骨折による変形、左右の脚の長さが違う(脚長不等)、などが挙げられます。
早めの受診をおすすめする「危険なサイン(レッドフラッグ)」
お子様に次のような様子がみられる場合は、早めに詳しい検査が必要です。
- 変形がとても強い(O脚で膝の間が3cm以上、X脚でくるぶしの間が8cm以上開いている)
- 左右の脚で明らかに形が違う(非対称)
- 年齢ごとの自然な変化の時期を過ぎても良くならず、むしろ悪化している
- 歩くときに膝や股関節を痛がる、または足を引きずって歩く
- よく転ぶ、速く走れない、体を左右に大きく揺らして歩く
- 身長が伸びない、体重が増えないなど、全身の成長に遅れがみられる
当院での検査と治療の流れ
病気が原因となっている脚の変形を早期に見つけ、その原因を正確に突き止めるため、当院では次のような手順で専門的な検査と治療を行っています。
画像診断(下肢全体のレントゲン撮影)
まず診断の基本となるのが、立ったまま体重をかけた状態で脚全体を写すレントゲン撮影です。一つの画面に股関節、膝、足首をすべて収めることで、体重が真っ直ぐにかかっているか(体重負荷軸のズレ)や、骨の曲がり具合を正確に確認します。さらに、くる病特有の骨の成長部分の乱れや、ブラウント病にみられるすねの骨の変化なども細かくチェックできるため、この検査だけで多くの病気を見分けることができます。
血液・代謝検査
骨の栄養状態や代謝に関わる「くる病」などの病気が疑われる場合や、関節が腫れて熱を持っているような場合には、血液検査を行います。具体的には、カルシウムやリン、骨の成長に関わる酵素(アルカリフォスファターゼ)の数値を調べるほか、ビタミンDが体内に十分に足りているか、副甲状腺ホルモンに異常がないかなどを確認します。必要に応じて、腎臓や肝臓の働き、炎症の有無などもあわせて調べ、総合的に原因を探ります。
治療戦略(経過観察と生活指導)
検査の結果、自然な成長の範囲内であれば、3〜6ヶ月ごとに定期的な診察を行い、経過を優しく見守ります。もしビタミンDや日光の不足が原因であれば、適度な日光浴のアドバイスや、鮭、魚卵、干ししいたけなど、カルシウムやビタミンDを多く含む食事について具体的な生活指導を行います。なお、お子様のO脚やX脚に対しては、装具を使った治療はあまり効果がないとされているため、当院では主に生活面からのサポートを大切にしています。
手術加療(基幹病院に紹介)
成長しても自然に良くならないと判断される場合や、変形が強く関節に痛みや負担が出ている場合には、手術が必要になることがあります。手術といっても、まずは体への負担が少ない方法を検討します。お子様自身の「骨が成長する力」を利用し、骨の成長部分に小さなプレートを一時的に添えてゆっくりと角度を正していく治療が広く選ばれています。ただし、変形が完全に進行してしまうと、骨を切って治すような負担の大きな手術が必要になるため、タイミングを見極めることが重要です。
まとめ:適切なタイミングでの専門医受診を
お子様の歩き方や足の形は、単なる見た目の問題だけでなく、将来の健やかな運動機能の発達に直結しています。「成長の範囲内だろう」と自己判断して放置した結果、病的な変形が進行してしまうと、将来的に大がかりな手術が必要になるケースもあります。
当院では、下肢アライメントの客観的な計測と丁寧な身体診察、そして必要に応じた適切な画像・血液検査により、生理的なものか治療を要するものかを正確にスクリーニングいたします。
少しでもお子様の歩容(歩き方)や足の形状に違和感やご不安を覚えましたら、時期を逃さず、ぜひ一度当院へお気軽にご相談ください。専門医の視点から、お子様の健やかな成長を全力でサポートいたします。
参考文献
及川昇.歩き方が気になります.小児科診療 2026; 89(Suppl 1): 319-326.