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こどもの原因不明な痛み「成長痛」ってなに?
お子さんが「急に膝が痛い」「足首が痛い」「夜に泣き出して歩けない」「抱っこしないと歩けない」と訴えることがあります。日中は元気に走っていたのに、夜になると急に痛がることもあり、ご家族はとても心配されて受診されます。
原因がはっきりしない痛みは不安ですよね。「これはいわゆる成長痛かな?」と思って様子を見る方もいますが、実は別の病気が隠れていることもあります。まずは「受診が必要なサインがあるか」を知ることが大切です。
すぐ受診してほしいサイン
痛い場所が赤く腫れて熱っぽい、発熱をともなっている、片足だけを強く痛がって足を引きずる・歩きたがらない、夜だけでなく日中も痛みが続いて長引いている、といった症状があるときは、いわゆる成長痛ではなく、ほかの病気が原因になっている可能性があります。
このようなケースでは、骨や関節の炎症、感染、骨折に近い疲労障害、血液の病気などを確認する必要があります。当院では、お子さんの歩き方や痛みの場所の確認、股関節・膝・すね・足首などの圧痛や腫れのチェックを行い、必要に応じてレントゲンや超音波検査(エコー)、血液検査で骨や関節の異常がないかを確認します。抱え込んで悩まず、まずは院長にご相談ください🍀

成長痛とは?
成長痛(Growing pains)とは、「幼児〜学童期に、はっきりした原因がないのに起こり、比較的短時間で自然におさまる四肢(あし・腕)の痛み」のことを指します。典型的には、寝る前・夜に突然、膝や太もも、ふくらはぎなどの痛みを強く訴えますが、1時間ほどで落ち着き、翌朝にはケロッとしている、という経過をたどります。
このような痛みは何度かくり返すことがあり、数年間にわたり、思い出したように「また痛い」と言うこともあります。成長痛は珍しいものではなく、報告によっては、未就学〜小学校低学年の子どもの3人に1人が経験するというデータもあります。つまり「よくあるもの」ではあります。(Bishop の報告によると小児の四肢の疼痛の原因は成長痛が最多で、 26%(2435/9380人)と報告されています)。
なぜ成長痛は起こるの?
「成長痛」という言葉が医学用語として定着したのは、1939年にShapiroという小児整形外科医が「リウマチ熱などの明確な病態を持つ疾患を除外した、原因が明確でない痛み」と述べてからだとされます。それ以降、成長痛がなぜ生じるのか研究が行われてきましたがその病態は完全には解明されていません。何らかのきっかけ、例えば「次子の妊娠・出産、入園・入学後の発症、親しい人やペットとの別れなど」が誘因となると報告している文献があります。

成長痛についてわかっていること(成長痛に関する報告)
これまでの医学研究から、成長痛にはいくつか共通する傾向があることが報告されています。ただし、すべてのお子さんに当てはまるわけではなく、「こういう傾向が多い」ということです。
・下肢(太もも・ひざ・ふくらはぎなど)の筋肉をやさしくストレッチすると、痛みが落ち着くまでの時間が短くなることがある
・4〜6歳くらいの子どものうち、およそ3人に1人が成長痛のような痛みを経験すると報告されている
・成長痛といわれる子どもは「痛みを感じやすい(痛みの閾値が低い)」傾向がある
・同じお子さんを数年後に追跡して調べると、成長痛が長く続いた子どもは、症状が自然におさまった子どもと比べて、その後も痛みを感じやすい状態が残る
・成長痛は、きょうだいの一番上の子(長子)やひとりっ子でよくみられる
・学校でよく頑張るタイプ、いわゆる「しっかりしている子」「まじめで我慢強い子」「成績が良い子」に多い
海外の研究を見ると、痛みに比較的敏感な子供が、骨の成長とともに痛みを感じる可能性が考えられます。筋肉のストレッチは、成長に伴う筋肉への伸張負荷を減少させ、骨にかかる圧縮負荷も軽減すると推測されています。
国内の研究は比較的小規模で、整形外科を受診した患者を対象にしています。そのため、成長痛を持つ子供の一般的な特徴を示しているわけではなく、成長痛の症状で整形外科を受診する家庭の背景を示す結果となっていると推察されます。
成長痛と見分けなければならない疾患は?
子どもの四肢の痛みがすべて成長痛とは限りません。発熱をともなう痛み、長く続く痛み、歩き方に影響する痛み(足を引きずる・歩きたがらないなど)、はっきり腫れている痛みは、ほかの病気が隠れている可能性があります。このような場合は整形外科の受診をおすすめします。
特に股関節や膝の痛みでは、ペルテス病、大腿骨頭すべり症、化膿性関節炎、慢性再発性多発性骨髄炎など、骨や関節に炎症や障害が起こる病気があります。これらは早めの診断・治療が必要です。
また、傍骨端線部限局性骨髄浮腫(骨の成長が終わる時期に、骨の中の成長軟骨板のまわりで起こる痛みを伴う炎症)といった、成長期特有の痛みもあります。
スポーツや使いすぎが関係するものとしては、疲労骨折、腱付着部の炎症、分裂膝蓋骨、骨端症(Sinding-Larsen-Johansson病、Osgood-Schlatter病)などがあります。これらは「成長痛」と言われやすいのですが、実際には別の原因があります。
さらに、若年性特発性関節炎、白血病、悪性腫瘍のように、全身の病気が背景にあることもあります。

成長痛に対する治療は?
成長痛に対して「これをすればすぐ治る」という特効薬のような治療はありません。多くの場合は安静にして様子をみるだけで痛みはおさまり、後に後遺症を残すこともほとんどありません。
痛みが強いときや不安が強いときは、鎮痛薬(痛み止め)や湿布を使ってもかまいません。ただし必ずしも毎回必要というわけではありませんし、痛みをごまかすことで、ほかの病気が隠れてしまう場合もあります。漫然と長期間使い続けるのは避けてください。
おうちでできるケアとして、痛がっている場所をお母さん・ご家族がやさしくさすってあげると落ち着くことがある、という報告があります。声かけやスキンシップで安心して痛みがやわらぐ、というのも成長痛によくみられる特徴です。まずはお子さんを安心させてあげることがとても大切です。
成長痛かな?とおもったら
「成長痛」という言葉は、原因のわからない痛みに不安を感じている保護者の方を安心させるために、便利に使われることがあります。ただ、実際にはほかの病気が隠れている場合もあるため、「成長痛でしょう」と決めつけて安易に様子を見るだけにしてしまうのはおすすめできません。
たとえば、痛い場所が赤く腫れていて触ると熱っぽい、熱が出ている、片足だけを強く痛がって足を引きずる・歩きたがらない、夜だけでなく日中も痛みが続いて長引いている、といった場合は、いわゆる成長痛ではなく別の原因がある可能性があります。こうしたときは自己判断で「そのうち治るはず」と思い込まず、整形外科で診察を受けて確認しておくことをおすすめします。
ひとりで抱え込まずに、まずは当院にご相談ください🍀
よくある質問(FAQ)
Q1. 成長痛は何歳くらいで多いですか?
一般的には3〜12歳ごろの子どもに多くみられます。特に小学校低学年から中学年くらいの年齢で、夕方から夜にかけて「足が痛い」「ひざが痛い」「ふくらはぎが痛い」といった訴えがよくみられます。男女差は大きくありません。活発に動く子や、身長が伸びている時期に訴えが出やすいと言われています。
Q2. 成長痛はどれくらい続きますか?毎晩痛がるのは普通ですか?
成長痛は一時的な痛みで、数十分から数時間で自然におさまることが多いのが特徴です。数日から数週間のあいだ、思い出したように「また痛い」と訴えることもあります。ただし、ほぼ毎晩のように強い痛みが続く場合や、痛みで眠れない状態が長引く場合は注意が必要です。特に「朝になってもまだ痛い」「歩きたがらない」「押さえると強く痛がる」「赤く腫れて熱をもっている」「発熱がある」というときは、単なる成長痛ではなく、ほかの病気が隠れている可能性がありますので、整形外科の受診をおすすめします。
Q3. 病院に行ったほうがいい成長痛と、様子を見ていい成長痛の違いは?
次のような症状がある場合は、早めに整形外科を受診してください。
・夜だけでなく、日中も痛みを強く訴える
・痛い場所が赤い・腫れている・熱っぽい
・発熱や全身のだるさがある
・足を引きずる、びっこを引く、歩きたがらない
・「抱っこじゃないと歩けない」と言うなど、急に歩けなくなった
・同じ場所を1週間以上ずっと痛がっている
一方で、夜に「足が痛い」と泣いても、翌朝にはケロッとして普通に走り回っている、腫れや熱感がない、熱もないという場合は、いわゆる典型的な成長痛であることも多いです。軽くさすってあげたり、安心させてあげるだけで落ち着くこともあります。心配なときは「一度診てもらっておこう」で受診していただいて大丈夫です。
Q4. MRIや血液検査まで必要なことはありますか?
典型的な成長痛の場合は、必ずしも検査が必要というわけではありません。診察で痛む場所や歩き方などを確認し、レントゲンも不要なことは少なくありません。ただし、痛みが長く続いている、腫れや発熱がある、足を引きずっているなど、成長痛らしくない所見があるときは、骨や関節の病気を除外するためにレントゲン検査を行います。場合によっては、血液検査で炎症や感染がないかを確認したり、詳しい評価のためにMRIなどの精密検査が必要になることもあります。大腿骨頭すべり症、ペルテス病、化膿性関節炎など、成長期特有の病気が隠れていないかを確認することがとても大切です。
参考文献
小林大介.運動器の疼痛と成長痛の鑑別と治療.ペインクリニック 45(臨時増刊): S31-S40, 2024.
西須 孝. 成長痛 ~子どもの四肢の夜間痛~. チャイルドヘルス Vol. 24 No. 2.
白山 輝樹ら. こどもの下肢痛 成長痛で良いのか?. 日小整会誌 28(1):63–65, 2019.
Pavone V. et al. “Growing pains: a study of 30 cases and a review of the literature.” J Pediatr Orthop, 31: 606-609, 2011.
監修:三国ゆう整形外科 院長 曽我部 祐輔(整形外科専門医)
監修日:2025年11月1日