整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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2023.10.04 整形外科一般

こどもの原因不明な痛み「成長痛」ってなに?

三国ゆう整形外科の院長の曽我部です。お子さんに「急な膝や足首の痛み」、「夜に痛みが強くて泣きだす」、「あるけなくて抱っこをしないといけない」などの症状がでてくることがあります。たいていはご両親が心配になり受診されます。

原因がわからず、急に痛みがでると心配になりますね。

「成長痛」かな?と思い放置されることもありますが、裏にほかの病気が隠れていることもあります。

成長痛(Growing pains)とは?

「幼児・学童期に、明らかな原因がなく発症し、短時間で自然に消失する四肢の痛み」です。典型的な症状としては、寝る前に突然、激しく膝や太ももを痛がり、それが1時間以内に自然に治まります。

このような症状が出たり消えたりして、不定期に数年間続くこともあります。Bishop の報告によると小児の四肢の疼痛の原因は成長痛が最多で、 26%(2435/9380人)と報告されており頻度の高い疼痛です。

成長痛はなぜ起こるのか?

「成長痛」という言葉が医学用語として定着したのは、1939年にShapiroという小児整形外科医が「リウマチ熱などの明確な病態を持つ疾患を除外した、原因が明確でない痛み」と述べてからだとされます。それ以降、成長痛がなぜ生じるのか研究が行われてきましたがその病態は完全には解明されていません。何らかのきっかけ、例えば「次子の妊娠・出産、入園・入学後の発症、親しい人やペットとの別れなど」が誘因となると報告している文献があります。

成長痛がなぜおこるのか、その仕組みはまだ明らかではありません

成長痛についてわかっていること

過去の医学文献より、以下のことが報告されています

下肢の筋肉をストレッチすると、成長痛の消退が早くなる

4~6歳の子どものうち、3人に1人が成長痛を経験する

成長痛の子どもは疼痛の閾値(痛みを感じるライン)が低い

成長痛が続いている子どもを5年後に調査した結果、症状が残っている子どもは、症状が解消された子どもに比べて、疼痛の閾値が低い

成長痛は、家族の中で最初の子供(長子)や独りっ子に多くみられる

学業成績が良い子どもにも成長痛が多い

母親の過干渉を受けている子どもにも成長痛が多い

海外の研究を見ると、痛みに比較的敏感な子供が、骨の成長とともに痛みを感じる可能性が考えられます。筋肉のストレッチは、成長に伴う筋肉への伸張負荷を減少させ、骨にかかる圧縮負荷も軽減すると推測されています。

国内の研究は比較的小規模で、整形外科を受診した患者を対象にしています。そのため、成長痛を持つ子供の一般的な特徴を示しているわけではなく、成長痛の症状で整形外科を受診する家庭の背景を示す結果となっていると推察されます。

成長痛と見分けなければならない疾患は?

子どもの四肢の痛みがすべてが成長痛であるとは限りません。発熱を伴ったり、長く続いたり、運動障害を伴ったり、患部の腫脹を伴う痛みは、ほかの疾患が隠れている可能性があり、整形外科の受診が推奨されます。

見分けないといけない疾患の一例(特に股関節、膝関節の疾患)として、以下のようなものがあります。

ペルテス病、大腿骨頭すべり症、化膿性関節炎、慢性再発性多発性骨髄炎

傍骨端線部限局性骨髄浮腫(骨の成長終了時期に、骨の中の成長軟骨板周辺で生じる痛みを伴う炎症)

疲労骨折、スポーツによる腱付着部の炎症、分裂膝蓋骨

骨端症(Sinding-Larsen-Johansson病、Osgood-Schlatter病)

若年性特発性関節炎、白血病、悪性腫瘍

成長痛と決めつけず、必要な身体診察、画像検査を受けることが大切です
成長痛と決めつけず、必要な身体診察、画像検査を受けることが大切

成長痛に対する治療は?

成長痛に対して特効薬的な治療はありません。経過観察と症状がひくまでの間の安静のみで症状が良くなることがほとんどです。鎮痛薬、湿布は痛みや不安が強ければ使用してもかまいませんが、必ずしも必要ではありません。

母親がさすることで痛みが落ち着くと報告している文献もあります。

鎮痛薬、湿布の使用は痛みを抑えてほかの疾患を覆い隠してしまうことがあるので、漫然と鎮痛薬や湿布を使い続けることは避けましょう。

成長痛かな?とおもったら

「成長痛」という言葉は、原因のわからない痛みに対して不安を感じる保護者を安心させる便利な言葉です。しかし、ほかの病気が隠れている可能性があり、安易に経過をみるのはよくありません。

発熱を伴う痛み、持続的な痛み、患部の腫れを伴う痛み、ほかにも症状が続いて不安がある場合には、整形外科を受診することをお勧めします。

抱え込んで悩まず、まずは院長にご相談ください🍀

参考文献

西須 孝. 成長痛 ~子どもの四肢の夜間痛~. チャイルドヘルス Vol. 24 No. 2.

白山 輝樹ら. こどもの下肢痛 成長痛で良いのか?. 日小整会誌 28(1):63–65, 2019.

Pavone V. et al. “Growing pains: a study of 30 cases and a review of the literature.” J Pediatr Orthop, 31: 606-609, 2011.

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