整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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2023.05.12 整形外科一般リハビリテーション

「運動すると痛みが和らぐ!」不思議なメカニズム

みなさまこんにちは。院長の曽我部です。

腰痛や肩こり、膝の痛みなど長引く痛みに悩む患者さんに、「痛みを和らげるためには運動やリハビリが大切です」とよく話します。そうすると、「本当に運動すると痛みが減るの?」「逆に、痛みが増えるんじゃない?」と疑問に思われる方もいます。

運動が痛みを軽減するというのは昔から経験的にはよく知られていました。その理由が科学的に明らかにされ始めたのは最近のことです。今日は整形外科医の視点から「運動がなぜ痛みを和らげるのか」、そのメカニズムをご説明します。

運動で痛みが良くなるというのは、不思議なことのようにおもえますね
運動で痛みが良くなるというのは、不思議なことのようにおもえます

運動によって痛みが軽減するメカニズム

運動をすることで痛みを感じにくくなる現象を運動誘発性の痛み抑制」(EIH:exercise-induced hypoalgesia)と呼びます。その理由として、私たちの体の内側にある痛みをコントロールするシステム(内因性疼痛調節系)が関わっていることがわかっています。

このシステムには、オピオイド(麻薬のこと)系と非オピオイド系の二つのメカニズムがあります。オピオイド系は「ランナーズハイ」、つまり運動を長時間続けることで起こる一種の高揚感を生じさせるもので、体内で生成されるβエンドルフィンという物質が関与しています。しかしこのメカニズムだけでは、EIHの全てを説明することは困難です。なぜなら、βエンドルフィンが体内で生成されるためには、長時間かつ大きな負荷の運動が必要だからです。日常的にそんな運動をすることはほとんどの人にとって難しいでしょう。

一方、非オピオイド系には神経系と筋肉系があります。神経系では、運動をすることで脳の快感を司る部分が活性化されたり、脳の免疫細胞であるミクログリアの活動が活発になることが報告されています。筋肉系では、筋肉から出るさまざまな物質、特に「マイオカイン」という物質が抗炎症作用や神経に影響を与え、EIHと関連していることが確認されています。運動をしたり、筋肉が発達するとこのマイオカインの分泌量は増大し、疼痛を軽減させる作用を発揮すると考えられているのです。マイオカインは疼痛を改善するだけではなく、脂肪を分解してエネルギーに変えやすくしたり、脳・肝臓、すい臓の機能を改善したり、免疫を強化したり、骨を強くしたり、腫瘍細胞の発育を抑制するなど全身に様々な好ましい影響をもたらします。痛みを抑える効果はマイオカインの一つの側面に過ぎないのです。

そして、現在最も注目されているEIHのメカニズムは、カンナビノイドという物質です。カンナビノイドはマリファナに似た作用を持ち、EIHを引き起こします。カンナビノイドは通常の運動レベルでも体内で生成されるため、EIHの主要なメカニズムとされています。マリファナは体に有害な作用を有することもありますが、運動により体内で生成されるカンナビノイドには恐ろしい副作用はないと考えられ、安全に医療用大麻のような除痛効果が得られます。

「慢性疼痛ガイドライン」でも運動が痛みを和らげることが述べられています。運動は、脳が痛みを和らげる成分である「ドーパミン」も放出します。運動によって痛みが和らぐメカニズムは、まさにこれらの様々なホルモン、神経伝達物質の作用によるものです。

運動は全身に好ましい影響を与える。痛みを抑える効果はそのうちのひとつにすぎない。
運動は全身に好ましい影響を与える。痛みを抑える効果はそのうちのひとつにすぎません

痛みにはマッサージよりも運動!

矢吹らは、肩こりの患者さんで「マッサージ」と、「トレッドミルを使った全身運動」の効果を比較しました。その結果、全身運動を行った場合には、マッサージよりも肩こりの痛みがやわらぐことがわかりました。また、全身運動は肩の僧帽筋の血流を長時間増加させる効果があることも分かりました。つまり、全身運動はマッサージに比べて肩こりの改善に効果的であると判断できます。

慢性疼痛ガイドラインにおいても、整骨院での施術、マッサージに疼痛改善効果があるとは述べられていません。筋肉は自分の意志と力で動かすことが大事なのです。

好きで楽しく続けられる運動を選ぶ

運動療法は種類に関係なく、それ自体が有効な治療手段です。特に全身の有酸素運動+筋力増強トレーニングが最も理想なのですが、「なんでもよいので自分に合った運動を続けることが重要」です。WHOは体に合う、自分が続いけやすい運動を継続することの重要性を強調しています。

しかし自身の病状に合わない運動を無理にすると、逆効果になることもあります。例えば変形性膝関節症の人がジョギングを急に始めると膝を痛めてしまいます。何をしてよいかわからないときは、整形外科医のアドバイスを聞いてみましょう。

運動を始めるきっかけにリハビリを利用しましょう

運動が大切だということがわかっていてもなかなか始められない、続けられないものです。また腰や膝の痛みが強い場合、どんな運動でもよいといわれてもどうしてよいかわからないという方は多いと思います。そこで整形外科クリニックでのリハビリテーションをうまく利用してください。

当院では医師と相談することでNSAIDsなどの鎮痛薬の処方、痛みを抑えるトリガーポイントブロック注射などをうけながら、国家資格を有するプロのセラピストによるリハビリを受けることができます。

また日常生活の中で、自宅でできるリハビリについてもお伝えしますので、リラックスしている時間やテレビを見ている時間、寝る前の時間などを利用して行うこともできます。

参考文献

Shoji YABUKI et al. Exercise therapy as a treatment of chronic musculoskeletal pain. ( J. Jpn. Soc. TMJ 2018;30:243-248

矢吹省司,菊地臣一.肩こりの病態(第 4 報).第 23 回日本運動器科学会(発表).2011 年 7 月 9 日


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