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モートン病とは?足の痛みを引き起こす疾患を整形外科医が解説
みなさまこんにちは、院長の曽我部です
「モートン病」という病気についてお聞きになったことはありますか?
歩行時に足の裏に激痛、しびれを生じる病気で診察室でも時々見受けられます。
踏み返し時に中足骨頭レベルの足底に激痛を生じ、中年以降の女性に好発します。
総底側趾神経ならびにそれから分岐した固有足底趾神経が,圧迫や摩擦を受けて生じる神経障害の1種
で、ヒールや先の細い靴を履いたときに荷重時に骨頭間が広がらないことが圧迫の要因となります。
慢性的なストレスにより神経がはれて、偽神経腫と呼ばれる状態となります(モートン神経腫と呼ばれ
ることもあります)。症状は「刺すような痛み」と表現され、歩行時に特に増強し、安静時に軽減する
という特徴があります。
好発年齢は平均 55 歳(29~81 歳)で,男女比は 1:10 と女性に多く発症します。
第 3趾間に多発し(約 66%),次に第 2 趾間(約 32%),次いで第 4 趾間(約 2%)に発症するとされます。
© Physiopedia 2023
モートン病の発症の原因は?
症状の発症には靴が原因となることが多いです。「パンプス、ヒールなどきつい靴を履いていない
か」、「裸足で床の上を歩くときに疼痛が出てこないか」もふくめて疼痛が生じる状況をしっかり確認
しておく必要があります。靴を履いたまま長時間立つ仕事(美容師、飲食業、アパレルの接客業な
ど・・・)で発症することも多くどのような仕事をされているかも大切な要素です。
足部の知覚をつかさどる趾神経は深横中足間靱帯のすぐ下(底側)を通るために慢性的な趾神経への圧
迫が加わりやすいことが神経症状を生じる原因と考えられています。
ヒールなどの底の高い靴や、先の細い靴がモートン病の発症の原因となります
© 2023. To Healthy Feet Podiatry
モートン病の診断のために必要な検査は?
足底から趾神経を触診し、圧迫により激痛を再現させることで診断がつけられます。
発生部位は第3趾間が最も多いのですが、第3趾間に多いのは脛骨神経から分岐した内/外側足底神経のそ
れぞれの枝が第3趾間部で吻合し神経が太くなっていることが原因です(太いため圧迫されやすい)。
中足部を両側から強く握ると疼痛が再現されることがあり、これをMulderテストと言いいます
また2/3の例では趾間の感覚低下(知覚鈍麻)を伴うとされています。
©Stanford Medicine
【画像診断】
XPでは合併するほかの足部疾患がないかを調べるために重要な基本検査です。
関節リウマチではMTP関節の破壊像を認めることがあります。
MRIでは偽神経腫はT1強調像で低信号に描出され、T2強調像では中足趾節間滑液包炎との鑑別に有用であるとされます。
【ほかに鑑別を要する疾患】
関節リウマチ、フライバーグ病、疲労骨折などの中足部に疼痛を訴える疾患ではないか検討する必要
があります。レントゲン検査、採血検査(関節リウマチに特異的な自己抗体)が有効です。
モートン病の治療は?
まずは手術以外の保存治療を行うことで、ほとんどの場合は症状の改善を認めます。
手術的治療は疼痛の強い場合に選択されることがあります。
【保存的治療】
靴の調整がまずは最も重要です。中足骨頭部に負荷がかかる先の細い靴やハイヒールを避け,ソールの
柔らかい靴を推奨します。また,きつい靴を履く場合は,こまめに靴を脱ぐなどの対応を行います。
足底挿板にメタタルザルパッドをつけると中足骨頭部が開張し、神経への圧迫が軽減され有効な場合が
ありますので、装具採型を検討します。
上記の治療でも疼痛が強い場合には診断的な意味もあり,神経ブロックを施行することがあります。
神経ブロックはキシロカイン(局所麻酔薬)、ステロイドの混注が多く用いられます。
内服薬として神経障害性疼痛に効果を発揮するタリージェ(ミロガバリンベシル酸塩)、リリカ(プレガバリン)を処方します。
リハビリテーションが重要な治療!
足趾の機能低下を伴っていることが多いため,タオルギャザリングや足指じゃんけんなどの足趾の筋力
を増す運動療法を併用します。また趾間に手指を入れて,趾間を広げ,中足趾節関節で底背屈する体操
(手と足の握手)が有効です。
当科では本症を熟知したリハビリスタッフ、セラピストが在籍しており、「家庭でも実行可能なエクサ
サイズの指導」も含めて総合的な運動を指導することができます。
©Tozando
モートン病に対する手術加療
保存的治療で症状が改善しない場合は手術を検討します
神経ブロックにて一時的でも症状が改善することが,手術を選択する際の重要な条件です。
神経が変性して神経腫が明らかな場合は神経腫切除術を、神経に光沢が残り,横中足靱帯による圧迫が
明らかである場合は神経上膜の神経剥離術を行います。
© Orthopaedic Surgeon | Foot and Ankle Specialist
参考文献)
田中康仁. 私の治療, No 5099. 2022.1.15 日本医事新報
殿谷一朗, 関節外科 Morton神経腫 -保存療法Vol.40 No.1(2021)