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肩こり・腰痛に効果あり!「トリガーポイントブロック注射」とは
こんにちは、院長の曽我部です。肩こりや腰痛、肩こりからくる頭痛は、整形外科を受診する方にとても多い症状です。WHOによると腰痛や肩こりは人類全体でも最も多い症状だそうです。そこで今回は、こうした症状に効果を発揮する「トリガーポイントブロック注射」についてお話します。
「痛みの引き金=トリガーポイント」が引き起こす痛みの悪循環
筋肉に痛みが生じることを、広く「筋筋膜痛症候群」といいます。筋肉内にある疼痛点をトリガーポイント(Trigger point)と呼び、これが「痛みの引き金」となります。トリガーポイントは、筋の起始部や停止部、末梢神経や血管が筋膜・筋肉を貫く部位に多く見られます。
痛みが存在すると、筋肉内の血管が収縮し、筋肉の緊張が生じます。筋肉の緊張が増すと、血流が悪化し、筋肉内の酸素や栄養が不足する状態(阻血)になります。これにより、痛みを引き起こす物質(発痛物質:ブラジキニン、プロスタグランジンなど)が蓄積し、さらに痛みが増します。この痛みがさらに血管の収縮や筋肉の過剰な緊張を引き起こすことで、痛みの悪循環が生じます。長期間にわたる痛みが、生活や仕事に支障をもたらすこともあります。
トリガーポイントは東洋医学のツボの位置(経穴)の位置とよく一致することが知られており、両者は誤差3cmの範囲内で71%一致するとされています。トリガーポイントブロックを行う部位は、下図のように「頚・肩・腰・臀部・膝・足」などです。トリガーポイントブロックは、東洋医学的なツボ(経穴)の概念+西洋医学的な薬物療法を組み合わせた治療法と言い換えることもできます。良いところどりをして慢性的な疼痛を取り除こうというコンセプトです。
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トリガーポイントブロック注射の効果
トリガーポイントブロックは、局所麻酔薬を痛みの原因となるトリガーポイントに直接注入することで、痛みを軽減します。他の注射、例えば硬膜外ブロックや神経根ブロックと比べると、トリガーポイントブロックは体への負担が少なく、安全性が高いとされています。外来で手軽に行うことができます。
トリガーポイント注射の目的は、「痛みの悪循環を断ち切る」ことです。筋肉内部のトリガーポイントが痛みの悪循環を形成している場合、トリガーポイント注射を行うことで、痛み物質が洗い流され、興奮状態にある知覚神経が鎮静化され、さらなる痛み物質の生成が抑制されます。これにより、痛みが軽減されるというメカニズムです。
トリガーポイント注射は、ピンポイントで注射するため、全身の副作用を減らせます。ロキソニンなどの内服薬は消化管から吸収され、全身に効果を発揮し、薬剤を届けたい局所(トリガーポイント)以外にも薬剤は行き渡ります。したがって消化管障害(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)や腎機能障害などの合併症が起こりやすくなります(こちらの記事もご覧ください)。
トリガーブロック注射は細い針で注射します
コロナワクチン接種で使われる一般的な針は「25G(ゲージ)」の細さですが、当院ではさらに細い「27G」の針を使用しています(数が大きいほど針は細くなります)。
一般的に注射は痛いイメージがあります。当院では細い針を使って痛みを抑える工夫をしており、当院で治療を受けた患者さんからは、「思ったより痛くなかった」という声が多く聞かれます。
「注射は痛い」という先入観にとらわれず、つらい症状が続くときはトリガーポイントブロック注射を検討してみましょう。
トリガーポイントブロック注射は「一時的な痛み止め」ではない
「注射って、一時的に痛みを取るだけなんでしょう?」とよく質問を受けます。しかしこれは間違いです。上述のように、注射の目的は、痛み物質の除去です。そのため痛みを一時的に抑えるだけではなく、つらい痛みのピークを低下させ、薬の効果が切れても痛みそのものを抑える効果を持ちます。
どのくらいの間きくのか、については残念ながら個人差が大きく、信頼に足る医学的報告には乏しいです。あくまで私の臨床的な体感ですが、「数日から1週間程度、痛みが改善」し、「その後また痛みがぶりかえしても、注射する前よりは良くなりました」と言われる方が多いと感じます。
「注射」と「リハビリ」は理想的な組み合わせ!
注射後のストレッチを十分に行わないと、症状が一時的に改善してもまた痛みの悪循環の中に引き戻されやすくなります。トリガーポイントブロック注射のあとは、その場限りの痛みの治療にとどまらず痛みの悪循環を断ち切るための運動療法、生活習慣改善をしっかり行うことが重要です。不良姿勢による長時間のデスクワークなどの環境を是正すること、運動による血流改善を合わせて行うことが必要不可欠なのです。
当院では理学療法士が、医学的知識に基づいてストレッチやリラクゼーションを行います。医療保険も適応されますので、注射だけではなく体質改善も行い方は、ぜひリハビリも頑張ってみましょう。
参考文献)
藤本幹雄ら. JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION, VoL.12, No.7 2003.
Travell & Simons’ Myofascial Pain and Dysfunction: Upper half of body
トリガーポイント注射の薬剤選択と作用機序, VITACAIN PHARMACEUTICAL Co.,LTD.