BLOG ブログ
肩こり・腰痛・首の痛みに効果あり!トリガーポイントブロック注射とは?
こんにちは、みなさん。院長の曽我部です😊
肩こりや腰痛、肩こりからくる頭痛(緊張性頭痛)は当院だけでなく、整形外科を受診する方にとても多く見られる症状です。WHOによると腰痛や肩こりは現代人全体でも最も多い症状だそうです。
そこで今回は、こうした症状に特に効果を発揮する「トリガーポイントブロック注射」についてお話ししたいと思います。
「痛みの引き金=トリガーポイント」が引き起こす痛みの悪循環
筋筋膜痛症候群(Myofascial pain syndrome)は、画像検査(レントゲン・超音波検査)や血液検査で異常がないにも関わらず、筋肉に痛みやコリが長期間(2~3ヵ月以上)続く病態です。筋肉内にある圧痛点をトリガーポイント(Trigger point)と呼び、これは「痛みの引き金」となる点です。トリガーポイントは、筋の起始部や停止部、末梢神経や血管が筋膜・筋肉を貫く部位に多く見られます。
痛みが存在すると、筋肉内の血管が収縮し、筋肉の緊張が生じます。筋肉の緊張が増すと、血流が悪化し、筋肉内の酸素や栄養が不足する状態(阻血)になります。これにより、痛みを引き起こす物質(発痛物質:ブラジキニン、プロスタグランジンなど)が蓄積し、さらに痛みが増します。この痛みがさらに血管の収縮や筋肉の過剰な緊張を引き起こすことで、痛みの悪循環が生じます。
痛みの悪循環に陥ると症状が慢性化し、長期間にわたる痛みが持続してしまうため、生活や仕事に支障をもたらすことがあります。

トリガーポイントは東洋医学のツボの位置(経穴)の位置とよく一致することが知られており、両者は誤差3cmの範囲内で71%一致するとされています。
トリガーポイントブロックを行う部位には、下図のように「頚・肩・腰・臀部・膝・足」などです。トリガーポイントブロックは、東洋医学的なツボ(経穴)の概念+西洋医学的な薬物療法を組み合わせた治療法と言い換えることもできます。良いところどりをして慢性的な疼痛を取り除く治療です。

© 2023 VITACAIN PHARMACEUTICAL Co.,LTD
トリガーポイントブロック注射の効果
トリガーポイントブロックは、局所麻酔薬を痛みの原因となるトリガーポイントに直接注入することで、痛みを軽減する治療法です。他の痛み治療法、例えば硬膜外ブロックや神経根ブロックと比べると、トリガーポイントブロックは体への負担が少なく、安全性が高いことが特徴です。さらに外来で手軽に行うことができます。
トリガーポイント注射の目的は、「痛みの悪循環を断ち切る」ことです。筋肉内部のトリガーポイントが痛みの悪循環を形成している場合、トリガーポイント注射を行うことで、痛み物質が洗い流され、興奮状態にある知覚神経が鎮静化され、さらなる痛み物質の生成が抑制されます。これにより、痛みが軽減されるというメカニズムです。

トリガーポイント注射は疼痛を起こしている局所(トリガーポイント)にのみピンポイントで注射することにより全身の副作用を回避することができるというメリットもあります。肩こりや腰痛で主に使用される鎮痛剤はロキソニンなどのNSAIDsといわれる薬剤ですが、内服薬は消化管から吸収され、全身に効果を発揮し、薬剤を届けたい局所(トリガーポイント)以外にも薬剤は行き渡ります。したがって消化管障害(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)や腎機能障害などの合併症が起こりやすくなります(詳細はこちらの記事をご覧ください)。
またトリガーポイントは血流が低下している場合があり、血管内で運搬されるに乗せる内服薬の作用が減弱する可能性があります。トリガーポイント注射は、ピンポイントで薬液を注入する治療法であるため確実に作用を発揮し、かつ全身の副作用を低減することができます。
トリガーブロック注射は痛い??細い針で注射するのでほとんどいたくありません
トリガーポイント注射は、痛みを感じにくい細い針を使って行われるため、注射が苦手な方でも安心して受けられます。
例えば、コロナワクチン接種で使われる一般的な針は「25G(ゲージ)」の細さですが、当院ではさらに2段階細い「27G」の針を使用しています(ゲージ数が大きいほど針は細くなります)。
「注射」と聞くと、ほとんどの人は痛いものだと思い込んでしまいますし、一般的に注射は痛いイメージがあります。しかし採血や予防接種とは異なり、トリガーポイント注射では細い針を使うため、痛みをあまり感じません。実際に当院で治療を受けた患者さんからは、「思ったより痛くなかった」という声が多く聞かれます。
「注射は痛い」という先入観にとらわれず、トリガーポイント注射の効果を実感してみてください。

「トリガーポイントブロック注射」と「リハビリ」は理想的な組み合わせ!
ストレッチを中心とした筋肉のリラクゼーション、緊張の緩和は疼痛の改善のために非常に重要です。
注射後のストレッチを十分に行わないと、症状が一時的に改善してもまた痛みの悪循環の中に引き戻されてしまうことになります。ストレッチによって罹患筋の筋線維のサルコメア長(筋肉の長さの単位)を正常にして筋硬結部の過緊張を和らげる効果が期待できます。

トリガーポイントブロックの治療において重要なことは、その場限りの痛みの治療にとどまらず痛みの
悪循環を断ち切るための運動療法、生活習慣指導をしっかり行うことが重要です。筋肉の血流不全が疼痛の原因となっているため、トリガーポイントのみならず不良姿勢による長時間のデスクワークなどの環境を是正すること、運動による血流改善を合わせて行うことが必要不可欠なのです。
当院では理学療法士・作業療法士の国家資格を持つセラピストが、医学・解剖学的知識に基づいてストレッチや筋リラクゼーションを行います。医療保険が適用されるため、街中のストレッチ店やスポーツジムのトレーナーによる治療よりも安く、そして医学的根拠に基づいた質の高い治療が受けられます。注射と合わせて、ぜひリハビリテーションも活用してみてくださいね。
皆様のご来院をお待ちしております😊
参考文献)
藤本幹雄ら. JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION, VoL.12, No.7 2003.
Travell & Simons’ Myofascial Pain and Dysfunction: Upper half of body
トリガーポイント注射の薬剤選択と作用機序, VITACAIN PHARMACEUTICAL Co.,LTD.